はじめに

前回は、補助ボイラの安全弁と付属品について整理しました。
今回は、補助ボイラの中でも重要な、ボイラ水の性状と水管理について整理します。
補助ボイラは、水を加熱して蒸気を発生させる装置です。
そのため、ボイラの中に入っている水の状態が悪いと、ボイラ本体や蒸気の質に悪影響を及ぼします。
特に試験では、

  • 伝熱面に付着したスケール
  • ボイラ水中の浮遊物
  • ボイラ水中のスラッジ

が、ボイラにどのような害を及ぼすかがよく問われます。
今回の記事では、まずこの3つに絞って整理します。

ボイラ水管理が重要な理由

ボイラでは、燃料を燃やして発生した熱を、水へ伝えます。
この熱を受ける部分を、伝熱面といいます。
伝熱面がきれいな状態であれば、熱は効率よく水へ伝わります。
しかし、伝熱面にスケールが付着したり、ボイラ水中に浮遊物やスラッジが増えたりすると、熱の伝わり方やボイラ内部の状態が悪くなります。
その結果、

  • 伝熱面の過熱
  • ボイラ効率の低下
  • 腐食
  • 蒸気の純度低下
  • 吹出し弁の損傷や閉塞

などにつながることがあります。
ボイラ水管理は、単に「水をきれいにする」ためだけではありません。
ボイラを安全に、効率よく、長く使用するために必要な管理です。

スケールとは

スケールとは、ボイラ水中の成分が伝熱面に付着して固くなったものです。
水中には、硬度成分など、加熱によって析出しやすい成分が含まれていることがあります。
これらがボイラ内部の伝熱面に付着すると、スケールとなります。
スケールは、金属の表面に付いた「よごれ」のように見えるかもしれません。
しかし、ボイラにとっては非常に大きな問題になります。

スケールが付着した場合の害

伝熱面にスケールが付着すると、熱が水へ伝わりにくくなります。
そのため、火炎や燃焼ガス側から熱を受けている金属部分が、必要以上に高温になります。
これにより、次のような害が生じます。

害内容
伝熱面の過熱熱が水へ伝わりにくくなり、金属部分が過熱する
膨出過熱により、伝熱面がふくらむことがある
破損過熱が進むと、伝熱面の破損につながる
燃料の損失伝熱が悪くなり、同じ蒸気を得るために多くの燃料が必要になる
内部腐食スケール下で腐食が進むことがある

スケールの害は、熱が伝わりにくくなることから始まります。
熱が水に逃げないため、金属が過熱し、膨出や破損の原因になります。
また、熱効率が悪くなるため、燃料の損失にもつながります。

浮遊物とは

浮遊物とは、ボイラ水中に浮いた状態で存在する細かい不純物です。
水の中に浮いているため、すぐに底へ沈むとは限りません。
この浮遊物が多くなると、蒸気と一緒に水分や不純物が持ち出されやすくなります。
これが、蒸気の質を悪くする原因になります。

浮遊物が多い場合の害

ボイラ水中の浮遊物は、キャリオーバの原因になります。
キャリオーバとは、ボイラ水の水分や不純物が、発生蒸気と一緒にボイラ外へ持ち出される現象です。
キャリオーバが起こると、蒸気の純度が下がります。
整理すると、次のようになります。

害内容
キャリオーバ水分や不純物が蒸気と一緒に持ち出される
蒸気の純度低下乾いたきれいな蒸気が得にくくなる
蒸気系統への悪影響配管や機器に水分・不純物が入るおそれがある

蒸気は、ただ圧力があればよいわけではありません。
蒸気中に水分や不純物が多いと、蒸気を使用する機器や配管にも悪影響を及ぼします。
そのため、浮遊物を増やさないことも大切です。

スラッジとは

スラッジとは、ボイラ水中の不純物が沈殿して、泥状にたまったものです。
浮遊物が水中に浮いているものだとすれば、スラッジは底部などにたまりやすい沈殿物と考えると分かりやすいです。
スラッジがたまると、ボイラ内部の流れや吹出しに悪影響を与えます。
また、スラッジが堆積した部分では、腐食が進みやすくなります。

スラッジが多い場合の害

ボイラ水中のスラッジが多くなると、次のような害が生じます。

害内容
底部吹出し弁の損傷スラッジが弁部に悪影響を与える
底部吹出し弁の閉塞スラッジがたまり、吹出しが十分にできなくなる
腐食スラッジが堆積した鋼面は腐食しやすくなる

スラッジは、たまってしまうと見えにくいところで問題を起こします。
特に、底部吹出し弁が閉塞すると、ボイラ水中の不純物を外へ出しにくくなります。
その結果、さらに水質が悪くなるおそれがあります。

スケール・浮遊物・スラッジの違い

スケール、浮遊物、スラッジは、どれもボイラ水管理で重要ですが、性質が違います。

項目どこにあるか主な害
スケール伝熱面に付着する過熱、膨出、破損、燃料損失、腐食
浮遊物ボイラ水中に浮いているキャリオーバ、蒸気純度低下
スラッジ底部などに沈殿する吹出し弁の損傷・閉塞、腐食

この3つは、混同しやすいところです。
試験では、それぞれがボイラに及ぼす害を問われることがあります。
まずは、

  • スケールは伝熱面に付いて熱を妨げる
  • 浮遊物はキャリオーバの原因になる
  • スラッジは底部吹出し弁や腐食に関係する

と整理しておくとよいです。

ボイラ水管理の基本的な考え方

ボイラ水管理では、ボイラ水を適切な状態に保つことが重要です。
具体的には、

  • スケールを作らせない
  • 浮遊物を増やさない
  • スラッジをためない
  • 必要に応じて吹出しを行う
  • 水質を定期的に確認する

といった管理が必要です。
ボイラ水の状態が悪くなってから対処するのではなく、悪くならないように日常的に管理することが大切です。

試験で押さえるポイント

今回のテーマでは、次の点を押さえておくとよいと思います。

テーマ押さえるポイント
スケール伝熱面に付着し、過熱、膨出、破損、燃料損失、内部腐食の原因となる
浮遊物キャリオーバの原因となり、発生蒸気の純度を下げる
スラッジ底部吹出し弁の損傷・閉塞の原因となり、堆積部は腐食しやすい
水管理スケール・浮遊物・スラッジを増やさないようにする

この問題は、文章としては短いですが、実務上はとても重要です。
ボイラ水の性状が悪くなると、ボイラ本体の損傷、蒸気の質の低下、燃料の損失につながります。

実船では

実船では、ボイラ水の状態を確認しながら、薬品管理や吹出しを行います。
スケールが付着すれば、伝熱が悪くなり、金属部分が過熱するおそれがあります。
浮遊物が増えれば、蒸気に水分や不純物が混入しやすくなります。
スラッジがたまれば、吹出し弁の閉塞や腐食につながります。
補助ボイラは、ディーゼル機関のように大きな運動部品が目立つ装置ではありません。
しかし、水の状態が悪ければ、内部で少しずつ悪影響が進みます。
日常の水管理は、補助ボイラを安全に使うための基本です。

おわりに

今回は、補助ボイラの水管理のうち、スケール、浮遊物、スラッジについて整理しました。
ポイントは、次の3つです。

  • スケールは伝熱面に付着し、過熱や破損の原因となる
  • 浮遊物はキャリオーバを起こし、蒸気の純度を下げる
  • スラッジは底部吹出し弁の損傷・閉塞や腐食の原因となる

ボイラ水管理は、補助ボイラの安全と効率に直結します。
次回は、ボイラ水管理の続きとして、プライミング・フォーミングとアルカリ度について整理します。

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