はじめに
前回は、補助ボイラの全体像と付属装置について整理しました。今回は、補助ボイラの安全を守る重要な装置である、安全弁と、ボイラに取り付けられる主な付属品について整理します。
補助ボイラは、船内で必要な蒸気を発生させる装置です。蒸気を発生させるということは、ボイラ内部に圧力がかかるということです。
そのため、補助ボイラでは、
- 蒸気圧力が高くなりすぎないこと
- 水位を正しく確認できること
- 給水を安全に行えること
- 蒸気に水滴を混入させないこと
- 異常時に安全に蒸気を逃がせること
が重要になります。
この中でも、安全弁は、ボイラの過圧を防ぐための最後の安全装置です。
安全弁とは
安全弁は、ボイラ内の蒸気圧力が規定値を超えたときに、自動的に開いて蒸気を逃がす装置です。
ボイラでは、燃焼によって水を加熱し、蒸気を発生させます。
もし蒸気の発生量が使用量を上回り、圧力が上がり続けると、ボイラに大きな力がかかります。
安全弁は、このような圧力上昇を防ぎ、ボイラの破裂事故を防止するために設けられています。
安全弁は、通常の運転中にしょっちゅう作動するものではありません。
しかし、いざというときに確実に作動しなければならない、非常に重要な装置です。
安全弁の取付け位置
安全弁は、ボイラの最も高い位置に、垂直に取り付けます。安全弁の取付け位置では、蒸気の流速が速く、周囲に比べて圧力が低くなるような場所を避ける必要があります。たとえば、蒸気止め弁の取付け部付近は、蒸気の取り出しによって蒸気の流れが速くなる場合があります。このような場所では、実際のボイラ圧力とは異なる圧力状態になるおそれがあります。そのため、安全弁は、ボイラ内の圧力を正しく受けることができる位置に取り付ける必要があります。
整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取付け位置 | ボイラの最も高い位置 |
| 取付け方向 | 垂直に取り付ける |
| 避ける場所 | 蒸気流速が速く、圧力が下がりやすい場所 |
| 目的 | ボイラ圧力を正しく受け、確実に作動させる |
低揚程安全弁
三級海技士(機関)では、低揚程安全弁の図問題が出題されます。低揚程安全弁では、弁が開き始めた後、十分な開度を保ち、安定して蒸気を逃がすことが重要です。そのため、弁体にはリップが設けられています。

(A:リップ)
リップの目的
安全弁のリップには、主に次の働きがあります。
| 働き | 内容 |
|---|---|
| 弁の開度を保つ | 弁が開き始めたとき、蒸気圧を受ける面積を大きくし、十分な開度を維持する |
| 吹出しを容易にする | ばねの力に抗して弁を開いた状態に保ちやすくする |
| 弁のばたつきを防ぐ | ボイラ圧が一定値に下がるまで弁を開けておき、弁の不安定な開閉を防ぐ |
安全弁は、単に少し開けばよいわけではありません。圧力が上がりすぎたときには、必要な量の蒸気を確実に逃がす必要があります。リップは、安全弁が安定して吹き出すための重要な構造です。
弁棒先端を円すい状にする理由
低揚程安全弁では、弁棒の先端を円すい状にする理由も問われます。これは、ばねの力を正しく弁の中心に働かせ、弁が弁座に平均に当たるようにするためです。弁が片当たりすると、蒸気漏れや弁座の損傷につながります。安全弁は、閉じているときには確実に密着し、開くときには確実に作動しなければなりません。そのため、弁棒先端の形状にも意味があります。
安全弁を開放したときの検査
安全弁を開放した場合には、弁体や弁座に異常がないか確認します。主な検査事項は、次のとおりです。
| 検査項目 | 内容 |
|---|---|
| 弁と弁座の当たり | 当たりが均一か、傷がないか確認する |
| 弁座・止めねじ | 軽く叩いて、緩みがないか確認する |
| 弁脚と弁座の隙間 | 計測値が適当か確認する |
| リップ隙間 | 計測値が適当か確認する |
安全弁は、作動すればよいというだけではありません。吹出し後も、確実に閉じることが必要です。当たり面の傷や調整不良があると、蒸気漏れや吹止まり不良の原因になります。
ドレン抜き装置
安全弁には、ドレン抜き装置が設けられます。ドレンとは、蒸気が冷えて生じた水分のことです。安全弁の弁箱や排気管にドレンがたまると、腐食、固着、吹出し圧の変化などの原因になります。ドレン抜き装置の主な役割は、次のとおりです。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 腐食防止 | 弁箱やばねに水がたまり、腐食するのを防ぐ |
| 固着防止 | 弁が固着するのを防ぐ |
| 吹出し圧の変化防止 | ドレンの水頭圧によって吹出し圧が変わるのを防ぐ |
| 真空発生防止 | 安全弁が噴気する場合に、弁箱部分に真空が生じるのを防ぐ |
安全弁は蒸気を逃がす装置ですが、水分の処理も重要です。蒸気装置では、ドレンの存在を軽視すると、腐食や作動不良につながることがあります。
揚弁装置とは
揚弁装置は、安全弁を手動で開けるための装置です。安全弁本体の操作レバーにワイヤなどを取り付け、離れた場所から操作して蒸気を逃がすことができるようにします。揚弁装置は、主に次のような場合に使用されます。
| 使用する場合 | 内容 |
|---|---|
| ボイラ破裂の危険がある場合 | 安全弁を開け、蒸気を大気へ逃がして圧力を下げる |
| 弁の固着防止 | 時々手動で安全弁を吹かせ、弁が固着しないようにする |
安全弁は自動的に開く装置ですが、非常時や点検上の理由から、手動で開けられる仕組みも必要です。ただし、揚弁装置を使用する場合には、周囲の安全を十分に確認し、蒸気の噴出による危険に注意する必要があります。
安全弁が止まらない場合
安全弁が噴気して、吹止まり圧までボイラ圧が下がっても、吹出しが止まらない場合があります。この場合、次のような原因が考えられます。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 弁と弁シートのすり合わせ不良 | 当たりが悪く、完全に閉じない |
| リップクリアランスの調整不良 | 吹出し後の閉止が不安定になる |
| 安全弁ばねの折損・不良 | 弁を閉じる力が不足する |
| スピンドルの曲がり | 弁が正しく上下しない |
| 弁の足と弁座筒部の隙間不良 | 隙間が過大または過小で作動が悪くなる |
安全弁の吹止まり不良は、蒸気の損失だけでなく、ボイラ圧力を維持できない原因にもなります。原因を一つに決めつけず、弁、弁座、ばね、スピンドル、隙間などを順番に確認する必要があります。
安全弁が噴気した場合の応急処置
安全弁が噴気した場合には、まず圧力上昇を止めることが重要です。ボイラ点火中であれば、すぐに消火し、これ以上蒸気圧力が上がらないようにします。また、タンク加熱などの蒸気消費量を増やし、蒸気圧力を下げる方法もあります。整理すると、次のようになります。
| 応急処置 | 目的 |
|---|---|
| すぐに消火する | さらなる圧力上昇を防ぐ |
| 蒸気消費量を増やす | ボイラ圧力を下げる |
安全弁が噴いたということは、ボイラ圧力が安全弁の設定圧力に達したということです。そのため、単に「安全弁が作動したから大丈夫」と考えるのではなく、なぜ圧力が上がったのかを確認する必要があります。
蒸気内管
ここからは、安全弁以外の付属品も整理します。蒸気内管は、ボイラから取り出す蒸気に水滴が混入しないようにするために設けられます。ボイラ内では、蒸気と水が接しています。水面近くからそのまま蒸気を取り出すと、蒸気と一緒に水滴が持ち出されるおそれがあります。蒸気内管は、できるだけ乾いた蒸気を取り出すための装置です。試験では、
- 蒸気内管は、ボイラから取り出す蒸気に水滴が混入しないようにするために設ける
と整理しておくとよいです。
給水内管
給水内管は、ボイラへ給水を入れるための内部配管です。給水内管は、ボイラ胴の最底部に導かれているわけではありません。安全低水位面より少し下に設けられ、管の先端を塞ぎ、側面に多数の小穴を開けて、そこから給水を細かく噴出させます。この構造には、次のような意味があります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 熱応力を避ける | 温度の低い給水がボイラ胴底部に直接当たるのを避ける |
| 混合をよくする | 給水を細分して噴出し、ボイラ水とよく混合させる |
| 水位管理に配慮する | 安全低水位付近で給水を分散させる |
冷たい給水が高温のボイラ胴底部に直接当たると、不当な熱応力を生じるおそれがあります。そのため、給水内管の位置と形状には意味があります。
給水止め弁と給水逆止め弁
給水系統では、給水止め弁と給水逆止め弁の位置関係も問われます。正しい配置は、給水止め弁をボイラに近い方に取り付け、給水逆止め弁をその外側に設けるという考え方です。これは、給水逆止め弁が故障した場合でも、給水止め弁を閉めることで、ボイラ圧力を低下させずに修理できるようにするためです。整理すると、次のようになります。
| 弁 | 役割 |
|---|---|
| 給水止め弁 | ボイラ側を閉じ、給水系統を隔離する |
| 給水逆止め弁 | ボイラ水や蒸気が給水系統へ逆流するのを防ぐ |
この位置関係は、単なる暗記になりがちですが、逆止め弁が故障したときに修理できるようにするためと理解すると覚えやすいです。
水面計元弁
水面計は、ボイラの水位を確認するための重要な装置です。水面計の元弁の位置が不適切だと、実際の水位と違う表示になることがあります。特に、蒸気側の元弁を蒸気止め弁の近くに設けすぎるのはよくありません。蒸気止め弁付近では、蒸気の流れによって圧力が少し下がることがあります。その結果、水面計内の水面が引き上げられ、実際の水面より高く表示されることがあります。ボイラの水位を誤って判断すると、低水位や高水位を見逃す危険があります。そのため、水面計は、正しい水位を示すように取り付ける必要があります。
プレパージとポストパージ
補助ボイラでは、点火前後のパージも重要です。パージとは、炉内や燃焼室内の残留ガスを空気で排除することです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| プレパージ | 点火前に炉内から残留ガスを排除すること |
| ポストパージ | 燃焼停止後に炉内または燃焼室内から残留ガスを排除すること |
プレパージを行うのは、点火前に炉内へ可燃性ガスが残っていると、点火時に爆発的な燃焼を起こすおそれがあるためです。ポストパージは、燃焼停止後に残ったガスを排除し、次の点火時の危険を小さくするために行います。「ポストパージは燃料油加熱器内のガスを排除すること」といった理解は誤りです。炉内または燃焼室内の残留ガスを排除すること、と押さえておきましょう。
マンホールドア開放時の注意
補助ボイラを開放する場合、マンホールドアを開ける順序にも注意が必要です。安全上、上部のマンホールドアを先に開けます。もし下部のドアを先に開いてから上部のドアを開くと、上部のドアを開いた瞬間に、温度の高い蒸気が吹き上げ、けがをするおそれがあります。ボイラの開放作業では、内部に残った蒸気や熱水による危険を常に考える必要があります。試験では短い正誤問題として出ることがありますが、実務上も重要な注意点です。
試験で押さえるポイント
今回のテーマでは、次の点を押さえておくとよいと思います。
| テーマ | 押さえるポイント |
|---|---|
| 安全弁の取付け | ボイラの最も高い位置に垂直に取り付ける |
| リップ | 弁の開度を保ち、吹出しを容易にし、ばたつきを防ぐ |
| 弁棒先端 | 円すい状にして、ばね力を弁中心に働かせる |
| 安全弁の検査 | 弁と弁座の当たり、傷、緩み、隙間を確認する |
| ドレン抜き装置 | 腐食、固着、吹出し圧の変化、真空発生を防ぐ |
| 揚弁装置 | 非常時や固着防止のため、安全弁を手動で開ける装置 |
| 吹止まり不良 | すり合わせ不良、リップ調整不良、ばね不良、スピンドル曲がりなど |
| 蒸気内管 | 蒸気に水滴が混入しないようにする |
| 給水内管 | 安全低水位面より少し下に設け、給水を細分して混合する |
| 給水止め弁 | 給水逆止め弁よりボイラに近い側に設ける |
| プレパージ | 点火前に炉内残留ガスを排除する |
| ポストパージ | 燃焼停止後に炉内・燃焼室内の残留ガスを排除する |
補助ボイラでは、部品名だけでなく、安全上なぜその構造や操作が必要なのかを理解することが大切です。
実船では
実船では、安全弁、水面計、給水装置、燃焼装置は、補助ボイラの安全運転に直結します。安全弁が固着していたり、吹止まりが悪かったりすると、過圧時に適切に蒸気を逃がせない、または蒸気が漏れ続ける原因になります。水面計が正しい水位を示さなければ、低水位や高水位を見誤るおそれがあります。また、給水内管や給水弁の構造を理解していないと、給水系統の異常時に適切な判断ができません。補助ボイラは、燃焼装置であると同時に、圧力容器です。試験では短い記述や正誤問題で出題されますが、実務では安全運転の基本になります。
おわりに
今回は、補助ボイラの安全弁と付属品について整理しました。ポイントは、次の3つです。
- 安全弁は、ボイラの過圧を防ぐための重要な安全装置である
- 蒸気内管、給水内管、水面計元弁、給水止め弁などは、蒸気の質、水位、給水の安全に関係する
- プレパージ、ポストパージ、マンホールドア開放順序は、燃焼や開放作業の安全に関係する
補助ボイラでは、圧力、水位、燃焼、ドレン、蒸気の流れを安全に管理することが重要です。次回は、補助ボイラの水管理として、ボイラ水の性状と水管理について整理します。
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