はじめに

前回は、補助ボイラの水管理として、プライミング・フォーミングとアルカリ度について整理しました。
今回は、補助ボイラの点火・汽醸・燃焼管理について整理します。
補助ボイラは、燃料を燃やして水を加熱し、蒸気を発生させる装置です。
そのため、運転では、

  • 点火前に炉内を安全な状態にする
  • 確実に着火させる
  • 急激な昇圧を避ける
  • 各部の漏れや温度上昇を確認する
  • 水位を確認する
  • 燃焼状態を安定させる

ことが重要になります。
特に、開放復旧後の最初の点火や、冷えた状態からの汽醸では、急激な加熱を避ける必要があります。

点火前に行うこと

補助ボイラを点火する前には、炉内や煙道内に可燃性ガスが残っていないようにする必要があります。
そのため、送風機を始動し、炉内換気を行います。
これをプレパージといいます。
点火前にプレパージを行うことで、炉内や燃焼室内の残留ガスを排除し、点火時の逆火や爆発的な燃焼を防ぎます。
また、噴燃ポンプを始動して燃料油を循環させます。
燃料油としてC重油を使用している場合には、燃料油を加熱し、適切な粘度にしておく必要があります。
整理すると、点火前の準備は次のようになります。

項目内容
炉内換気送風機を始動し、プレパージを行う
燃料油循環噴燃ポンプを始動し、燃料油を循環させる
燃料油加熱C重油を使用する場合は加熱して粘度を整える
安全確認炉内、燃料系統、空気系統の状態を確認する

点火は、単に火をつける作業ではありません。
燃料、空気、炉内状態を整えてから行う安全上重要な操作です。

開放復旧後に最初に点火する場合

補助ボイラを開放して掃除や点検を行った後、復旧して最初に点火する場合には、特に注意が必要です。
開放後は、ボイラが冷えた状態になっています。
また、燃焼装置、燃料油ライン、マンホールドア、付属品などを復旧した直後でもあります。
そのため、次のような点に注意します。

注意事項内容
燃料油の選択開放前に燃料油ラインをA重油へ切り換えておき、最初の点火ではA重油を使用する
チップの使用重油バーナには汽醸用のチップを使用する
炉内換気送風機を始動し、燃焼室・煙道内を十分に換気する
点火位置万一逆火が起きても、点火者が危険を受けにくい位置で点火する
着火確認バーナに確実に着火したことを確認する
風量調整空気調節器を全開とし、火炎の状態を見ながら風量を調節する

ここで大切なのは、急がないことです。
復旧後の最初の点火では、燃料油、空気、火炎、漏れ、各部の温度上昇を順番に確認しながら進めます。

汽醸とは

汽醸とは、ボイラに点火して、徐々に蒸気圧を上げていく操作です。
補助ボイラは、冷えた状態から一気に使用蒸気圧まで上げればよいわけではありません。
冷えたボイラを急に加熱すると、ボイラ各部の温度が一様に上がらず、不同膨張を生じます。
不同膨張が起こると、不等な熱応力が発生し、亀裂や漏えいの原因となるおそれがあります。
また、れんが積みの部分が局部的に過熱されると、無理な膨張により亀裂を生じやすくなります。
そのため、汽醸では、十分な時間をかけて徐々に加熱することが重要です。

汽醸中の基本的な注意

汽醸中は、蒸気圧力が少しずつ上がっていきます。
この間に、各部の状態を確認しながら、徐々に使用状態へ近づけます。
主な注意事項は次のとおりです。

段階注意事項
蒸気発生前できるだけ徐々に加熱する
空気抜き空気抜き弁から十分に空気を追い出した後、空気抜き弁を閉じる
昇圧開始後各部の漏れ、温度上昇の状態を確認する
0.2〜0.3MPa付近マンホールなどの増締めを行う
0.4MPa付近蒸気弁の開閉を試み、弁の固着を防ぐ
水位確認水面計を試験し、水位を確認する

汽醸中は、水位が上昇することがあります。
これは、水が加熱されて膨張し、ボイラ内で蒸気が発生していくためです。
そのため、点火前の水位だけで安心せず、汽醸中にも水面計を確認することが大切です。

0.2〜0.3MPaで行う作業

ボイラ圧力が0.2〜0.3MPa程度に達したら、マンホールなどの増締めを行います。
この段階では、ボイラが少し温まり、圧力もかかり始めています。
開放復旧後のマンホールドアや付属品の締付け部には、加熱や圧力によってわずかななじみが出ることがあります。
そのため、この段階で漏れがないか確認し、必要な増締めを行います。
ただし、増締め作業は、蒸気や高温部に注意しながら行う必要があります。

0.4MPa付近で行う作業

ボイラ圧力が0.4MPa程度に上昇したら、蒸気弁の開閉を試みます。
これは、蒸気弁の固着を防ぐためです。
長く使用していない弁や、復旧後の弁は、固着している場合があります。
運転状態に入ってから弁が動かないと、蒸気の送気や遮断に支障が出ます。
そのため、汽醸中の適切な段階で、蒸気弁の作動を確認しておきます。

自動燃焼制御装置の役割

補助ボイラには、自動燃焼制御装置が設けられることがあります。
この装置は、ボイラの負荷が変わった場合でも、蒸気圧を一定に保つために働きます。
蒸気の使用量が増えれば、蒸気圧は下がりやすくなります。
その場合、自動燃焼制御装置は燃焼を強め、蒸気圧を回復させます。
反対に、蒸気の使用量が減れば、燃焼を弱めて圧力の上がりすぎを防ぎます。
このように、自動燃焼制御装置は、負荷変化に応じて燃料量と空気量を調整します。
主な利点は次のとおりです。

利点内容
蒸気圧を一定に保つ負荷が変わっても圧力変動を小さくする
ボイラ効率が向上する燃焼状態を適切に保ちやすい
燃料を節約できる過剰燃焼を避けやすい
操作負担を軽減する手動調整の頻度を減らせる

フレームアイの役割

補助ボイラでは、燃焼状態を監視するために、フレームアイが用いられます。
フレームアイは、火炎の有無を検知する装置です。
自動点火時に着火しない場合や、燃焼中に何らかの原因で突然火が消えた場合、フレームアイが失火を検知します。
その場合、危急遮断弁、または重油電磁弁を閉じて、炉内への燃料油の流入を防ぎます。
これにより、未燃燃料が炉内にたまることを防ぎ、逆火を未然に防止します。

フレームアイが作動不良の場合

フレームアイが作動不良を起こすと、ボイラの運転に支障が出ます。
たとえば、バーナが正常に燃焼していても、フレームアイが失火と誤って検出すれば、燃料が遮断され、ボイラ失火トリップとなります。
一方、実際に失火しているのに検出できなければ、炉内に燃料油が流れ続け、危険な状態になるおそれがあります。
そのため、フレームアイは、単なる監視部品ではなく、燃焼安全装置として重要です。

状態起こり得ること
正常燃焼を失火と誤検知燃料が遮断され、ボイラ失火トリップとなる
失火を検知できない未燃燃料が炉内に流入し、逆火や爆発的燃焼の危険がある

振動燃焼とは

補助ボイラの燃焼では、振動燃焼、または脈動燃焼が問題となることがあります。
振動燃焼とは、燃焼ガスと空気の混合が不均一となり、燃焼がよくなったり悪くなったりすることで、小爆発が小刻みに連続して起こる現象です。
この小爆発が煙道内で共鳴すると、かま鳴りのような現象になります。
つまり、振動燃焼は、燃焼が安定せず、圧力や音が周期的に変動する状態です。

振動燃焼の原因

振動燃焼は、燃料と空気のバランスや、燃料の状態が悪いときに起こりやすくなります。
主な原因は次のとおりです。

原因内容
空気量の不足または過不足燃焼に必要な空気が適切でない
通風の脈動燃焼用空気の流れが安定しない
燃料油の加熱不良・過熱粘度が不適切になり、噴霧が悪くなる
油量が多すぎる空気量とのバランスが崩れる
燃料油への空気や水分の混入燃焼が不安定になる
燃料油圧力の変動噴霧状態が不安定になる
バーナの噴霧不良燃料と空気がうまく混合しない

振動燃焼は、単に「音が出る」現象ではありません。
燃焼状態が不安定であることを示すサインです。
そのまま放置すると、燃焼効率の低下、炉内圧力の変動、設備への悪影響につながるおそれがあります。

燃焼管理で見るポイント

補助ボイラの燃焼管理では、火炎の状態をよく観察することが大切です。
火炎が不安定であったり、煙が多かったり、異常音がしたりする場合は、燃料と空気の状態を確認する必要があります。

確認項目見るポイント
火炎の状態安定しているか、明るさや形が極端でないか
煙の状態黒煙や白煙が多くないか
燃料油温度適切な粘度となる温度か
燃料油圧力圧力変動が大きくないか
風量・通風圧空気量が不足または過剰でないか
バーナの噴霧燃料が細かく霧化されているか
異常音かま鳴り、脈動音がないか

燃焼管理では、燃料だけ、空気だけを見るのではなく、燃料と空気の混合状態を意識することが大切です。

試験で押さえるポイント

今回のテーマでは、次の点を押さえておくとよいと思います。

テーマ押さえるポイント
点火前送風機でプレパージを行い、炉内・煙道内を換気する
燃料油循環噴燃ポンプを始動し、必要に応じて燃料油を加熱する
開放復旧後の点火A重油、汽醸用チップ、炉内換気、逆火に対する安全位置、着火確認が重要
汽醸冷態から徐々に加熱し、不同膨張や熱応力を避ける
0.2〜0.3MPaマンホールなどの増締めを行う
0.4MPa付近蒸気弁の開閉を試み、固着を防ぐ
汽醸中の水位水位が上昇するので、水面計を確認する
自動燃焼制御蒸気圧を一定に保ち、効率向上と燃料節約に役立つ
フレームアイ失火を検知し、燃料を遮断して逆火を防ぐ
振動燃焼燃料と空気の混合不良などにより、小爆発が連続して起こる現象

補助ボイラの運転管理では、点火前の安全確認、徐々に昇圧する汽醸、安定した燃焼の3つを軸に整理すると分かりやすくなります。

実船では

実船では、補助ボイラの点火や汽醸は、手順を守って慎重に行う必要があります。
特に、開放復旧後や長期間停止後の最初の点火では、漏れ、燃料油系統、風量、火炎、水位、蒸気圧力を順番に確認します。
また、燃焼中にフレームアイが失火を検知してトリップした場合には、単に再点火するのではなく、なぜ失火したのか、燃料油温度や圧力、風量、バーナの状態を確認することが大切です。
振動燃焼がある場合も同じです。
音や振動だけでなく、燃料と空気の混合状態、燃料油中の水分や空気、通風圧の変動などを確認します。
補助ボイラは、主機関ほど大きな機械音を出す装置ではありませんが、燃焼と圧力を扱う装置です。
小さな異常を見逃さないことが、安全運転につながります。

おわりに

今回は、補助ボイラの点火・汽醸・燃焼管理について整理しました。
ポイントは、次の3つです。

  • 点火前にはプレパージを行い、炉内や煙道内の残留ガスを排除する
  • 汽醸では、急激な昇圧を避け、不同膨張や熱応力を防ぐ
  • 燃焼管理では、フレームアイ、燃料油、空気量、振動燃焼に注意する

補助ボイラの運転では、手順を守り、圧力・水位・火炎・燃料・空気を確認しながら進めることが大切です。
次回は、補助ボイラと排ガスエコノマイザの保守として、すす吹き・清掃装置・損傷防止について整理します。

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