はじめに

前回まで、三級海技士(機関)内燃限定のうち、ディーゼル機関について整理してきました。
今回からは、補助ボイラについて整理します。
内燃限定で受験する場合、主ボイラや蒸気タービンは対象外になりますが、補助ボイラは出題範囲に含まれます。
補助ボイラは、主機を動かすためのボイラではありません。
しかし、船内では蒸気を必要とする場面があります。
たとえば、

  • 燃料油の加熱
  • タンク加熱
  • 清浄機や配管系統の加熱
  • 生活用・雑用蒸気
  • 排ガスエコノマイザとの組合せによる蒸気発生

などに関係します。
そのため、補助ボイラは、主機関ほど目立つ設備ではありませんが、船内の運転を支える大切な装置です。

補助ボイラで学ぶ範囲

三級海技士(機関)内燃限定で出題される補助ボイラでは、主に次のような内容が扱われます。

分野主な内容
構造マンホール、鏡板、ボイラ胴、給水内管、蒸気内管など
付属装置安全弁、水面計、給水装置、燃焼装置、通風装置など
燃焼装置バーナ、燃料油、一次空気、燃焼制御など
自動制御燃料遮断、給水制御、失火時の安全装置など
排ガスエコノマイザ主機排気ガスによる熱回収、汽水分離、余剰蒸気処理など
水管理スケール、スラッジ、浮遊物、プライミング、フォーミングなど
運転管理点火、汽醸、送気、給水、すす吹き、パージなど
安全管理安全弁、低水位、過圧、逆火、燃焼不良など

補助ボイラは、ディーゼル機関のように大きな運動部品があるわけではありません。
その代わり、圧力・水位・燃焼・安全装置が重要になります。

補助ボイラを学ぶときの考え方

補助ボイラを勉強するときは、細かい部品名だけを暗記しようとすると、分かりにくくなります。
まずは、次の流れで考えると整理しやすくなります。

  1. 水を入れる
  2. 燃料を燃やして熱を加える
  3. 水を蒸気にする
  4. 蒸気を必要な場所へ送る
  5. 圧力や水位を安全に保つ
  6. 汚れや腐食を防ぐ
  7. 異常時には燃焼を止める

つまり、補助ボイラは、水を安全に蒸気へ変える装置です。
この基本を押さえると、マンホール、安全弁、給水内管、燃焼装置、排ガスエコノマイザなどの役割も理解しやすくなります。

ボイラ胴とマンホール

補助ボイラには、点検や清掃のためにマンホールが設けられます。
マンホールは、人が内部に入るための開口部です。
しかし、ボイラ胴に穴をあけるということは、その部分の強度が低下するということでもあります。
そのため、マンホールは単に「穴をあければよい」というものではありません。
どの方向に長径を向けるか、どのように補強するかが重要になります。

マンホールの長径方向

ボイラ胴にマンホールを設ける場合、マンホールの長径は、強度低下ができるだけ小さくなる方向に向けます。
試験では、A-A’方向か、B-B’方向かを問われる形で出題されます。

ここでは、ボイラ胴の応力が大きくなる方向の開口長さをできるだけ短くすると考えると分かりやすいです。
穴をあけると、その部分の板の強度は下がります。
そのため、応力の大きい方向に長い穴をあけると、強度上不利になります。
マンホールの長径方向は、図と一緒に覚えると理解しやすいところです。

マンホールの補強

マンホールを設けるために穴をあけると、その部分の板の強度が低下します。
そのため、ボイラ胴のマンホールには補強環を取り付けます。
また、鏡板に設けるマンホールでは、鏡板をボイラの内側に折り曲げて、折込みフランジとして補強します。
整理すると、次のようになります。

箇所補強方法
ボイラ胴のマンホール補強環を取り付ける
鏡板のマンホール鏡板を内側に折り曲げ、折込みフランジとする

マンホールは、点検のために必要ですが、ボイラは圧力容器です。
そのため、開口部の強度低下をどう補うかが重要になります。

マンホールドアの取付け

マンホールドアは、ボイラの外側からふたをするのではなく、ボイラの内側から当てる構造になっています。
マンホールドアの周囲には溝を設け、その溝にガスケットを入れます。
そして、ドアをボイラ内部から当て、外側にドックステーをかけ、ナットで締め付けます。

整理すると、次のようになります。

部品役割
マンホールドアマンホールを閉じるふた
ガスケット蒸気や水の漏れを防ぐ
ドックステーマンホールドアを外側から押さえる
ナットドックステーを締め付ける

ここで大切なのは、マンホールドアは内側から当てるという点です。
ボイラ内部の圧力が上がると、マンホールドアは内側から開口部に押し付けられるため、密着しやすくなります。

自動制御の役割

補助ボイラでは、蒸気圧力、水位、燃焼状態を安全に保つため、自動制御装置が重要です。
特に、燃焼制御装置では、異常が発生した場合に燃料を遮断し、危険な状態を防ぎます。
燃料遮断装置が作動する代表的な場合は、次のとおりです。

燃料遮断装置が作動する場合内容
蒸気圧が規定圧より高くなった場合過圧を防ぐ
ドラム水位が規定水位より低下した場合空だきを防ぐ
燃焼が中断した場合失火後の燃料供給を防ぐ
燃料油温度が規定温度より低下した場合燃焼不良を防ぐ
給水ポンプ・噴燃ポンプ・押込み送風機が停止した場合必要な水・燃料・空気が確保できない
電源が喪失した場合制御不能を防ぐ

補助ボイラでは、燃焼が続いているのに水位が低下すると、伝熱面が過熱して危険です。
また、失火したまま燃料だけが供給されると、再点火時に爆発的な燃焼を起こすおそれがあります。
そのため、異常時に燃料を止める仕組みは非常に重要です。

給水制御

補助ボイラでは、ボイラ水位を適正に保つ必要があります。
水位が低すぎると、伝熱面が露出して過熱するおそれがあります。
一方、水位が高すぎると、蒸気に水分が混入しやすくなります。
給水量を調整する方法としては、次のようなものがあります。

方法内容
制御弁による方法給水管系に制御弁を設け、その開度で給水量を調整する
蒸気駆動ポンプの速度制御供給蒸気量を変えてポンプ速度を調整する
電動給水ポンプのオンオフ制御ポンプを運転・停止して給水量を調整する

補助ボイラの水位管理は、試験でも実務でも重要です。
低水位、高水位のどちらも問題になります。

燃焼装置とロータリーバーナ

補助ボイラでは、燃料油を燃焼させて水を加熱します。
燃料油をよく燃やすためには、燃料を細かい粒にして空気とよく混ぜる必要があります。
そのために用いられる燃焼装置の一つが、ロータリーバーナです。
ロータリーバーナでは、アトマイジングカップの回転によって燃料油を飛散させ、一次空気によって油滴を霧化します。

ロータリーバーナの主な部品は、次のように整理できます。

部品役割
燃料油管燃料油を供給する
主軸回転部を支える
燃料ポンプ燃料油を送る
風車・送風機燃焼用空気を送る
アトマイジングカップ燃料油を回転により飛散させる

燃料油を完全燃焼させるには、燃料と空気をよく混合する必要があります。
一次空気は、アトマイジングカップで飛散した油滴をさらに細かくし、燃えやすい状態にする役割を持っています。

排ガスエコノマイザとの組合せ

ディーゼル船では、補助ボイラと排ガスエコノマイザを組み合わせた蒸気発生装置が用いられることがあります。
航行中は、主機の排気ガスが高温です。
この排気ガスの熱を利用してボイラ水を加熱すれば、燃料を使わずに、または燃料使用量を減らして蒸気を発生させることができます。
これが排ガスエコノマイザの基本的な考え方です。

排ガスエコノマイザを通る流れ

補助ボイラと排ガスエコノマイザを組み合わせた場合、流れは次のように整理できます。

流れ内容
1補助ボイラ内のボイラ水を、ボイラ水循環ポンプで送る
2ボイラ水は、排ガスエコノマイザの蒸発管へ送られる
3蒸発管内で、主機排気ガスから熱を受ける
4ボイラ水は汽水混合体となる
5汽水混合体は補助ボイラへ戻る
6補助ボイラ内で蒸気と水分に分離される
7蒸気は蒸気止め弁から取り出される

ここでは、補助ボイラの水を排ガスエコノマイザへ循環させ、そこで加熱して戻すという流れを押さえることが大切です。
排ガスエコノマイザは、補助ボイラとは別に設けられていますが、蒸気発生装置としては一体で考えます。

余剰蒸気の処理

航行中、主機の負荷が高い場合には、排ガスエコノマイザで多くの蒸気が発生することがあります。
発生蒸気量が船内の需要を上回る場合は、余剰蒸気を処理する必要があります。
一般には、蒸気配管中に圧力調整弁を設け、余剰蒸気を復水器へ導く方法がとられます。
整理すると、次のようになります。

状態処理
必要な蒸気量がある蒸気を船内で使用する
蒸気が余る圧力調整弁で復水器へ導く

蒸気は必要な分だけ使えばよいわけではありません。
発生しすぎた蒸気を安全に処理する仕組みも、蒸気発生装置では重要です。

蒸気内管と給水内管

補助ボイラの内部には、蒸気内管や給水内管が設けられます。
蒸気内管は、ボイラから取り出す蒸気に水滴が混入しないようにするためのものです。
給水内管は、給水をボイラ内へ適切に分散して入れるためのものです。
給水内管の先端は、ボイラ胴の最底部に導かれるのではなく、安全低水位面より少し下に設けられます。
これは、温度の低い給水がボイラ胴底部に直接当たり、不当な熱応力を生じるのを避けるためです。
また、給水を細かく分散させて、ボイラ水とよく混合させる役割もあります。

水面計元弁の位置

水面計は、ボイラ水位を確認するための重要な装置です。
水面計元弁の位置が適切でないと、実際の水位と違って見えることがあります。
特に、蒸気側の元弁を蒸気止め弁に近づけすぎると、蒸気止め弁付近で蒸気圧がやや下がり、水面計内の水面を引き上げてしまうことがあります。
その結果、実際の水面よりも高く表示されるおそれがあります。
ボイラの水位は安全に直結します。
そのため、水面計の構造や取付け位置も重要です。

試験で押さえるポイント

今回のテーマでは、次の点を押さえておくとよいと思います。

テーマ押さえるポイント
補助ボイラ船内で必要な蒸気を発生させる装置
マンホール開口部による強度低下を補う必要がある
マンホール長径応力と開口長さの関係で判断する
マンホールドアボイラ内部から当て、ガスケットとドックステーで締め付ける
燃料遮断装置過圧、低水位、失火、燃料油温度低下、ポンプ停止、電源喪失などで作動する
給水制御制御弁、ポンプ速度制御、オンオフ制御などがある
ロータリーバーナアトマイジングカップで燃料を飛散させ、一次空気で霧化する
排ガスエコノマイザ主機排気ガスの熱でボイラ水を加熱し、蒸気発生に利用する
給水内管安全低水位面より少し下に設け、給水を細分して混合する
蒸気内管取り出す蒸気に水滴が混入しないようにする

補助ボイラの問題は、部品名だけでなく、なぜその構造になっているのかが問われます。
マンホールであれば強度、燃焼装置であれば霧化、排ガスエコノマイザであれば熱回収、水面計であれば正しい水位表示と結び付けて理解しましょう。

実船では

実船では、補助ボイラは、燃料加熱やタンク加熱など、さまざまな用途で使われます。
また、航行中は排ガスエコノマイザを利用して蒸気を発生させることがあります。
補助ボイラは、常に大きな出力で動いている装置ではないかもしれません。
しかし、燃焼、水位、蒸気圧力、安全弁、給水装置などの管理を誤ると、重大な事故につながります。
特に、低水位、失火、燃焼不良、過圧は注意が必要です。
試験では、構造や装置名を答える問題が多いですが、実務では、それぞれが安全運転とどう関係しているかを意識することが大切です。

おわりに

今回は、補助ボイラの全体像と付属装置について整理しました。
ポイントは、次の3つです。

  • 補助ボイラは、船内で必要な蒸気を安全に発生させる装置である
  • マンホール、給水内管、蒸気内管などは、強度・水位・蒸気の質に関係する
  • 燃焼制御、給水制御、排ガスエコノマイザは、補助ボイラの安全運転と効率に関係する

補助ボイラは、ディーゼル機関と比べると地味に見えるかもしれません。
しかし、圧力容器であり、燃焼装置であり、船内蒸気を支える重要設備です。
次回は、補助ボイラの安全を守る重要装置である、安全弁と付属品について整理します。


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