はじめに
以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「法規」の港則法に関する過去問題その2です。
※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。
港則法
〔問題1〕
右図に示すように,甲及び乙の2隻の動力船が,港則法で定める特定港の航路内を航行し,しゅんせつ作業中の丙船付近で出会うおそれがある場合,両船はそれぞれどのような航法に基づき,どのような動作をとるべきか。ただし,両船とも総トン数5000トンで丙船付近では,甲及び乙の両船が同時に航路内を安全に通過できるほどの余裕はない。
【出題:H28/10,R02/02】

ポイントは,両船が同時に航路内を安全に通過できるほどの余裕がないこと。
余裕があれば,港則法第14条に従って,両船が右側通行により通過すればよいのですが。
そうでない場合は,基本法に戻って,海上衝突予防法 第38条,第39条を適用しましょう。
(切迫した危険のある特殊な状況)
第三十八条 船舶は、この法律の規定を履行するに当たつては、運航上の危険及び他の船舶との衝突の危険に十分に注意し、かつ、切迫した危険のある特殊な状況(船舶の性能に基づくものを含む。)に十分に注意しなければならない。
2 船舶は、前項の切迫した危険のある特殊な状況にある場合においては、切迫した危険を避けるためにこの法律の規定によらないことができる。
(注意等を怠ることについての責任)
第三十九条 この法律の規定は、適切な航法で運航し、灯火若しくは形象物を表示し、若しくは信号を行うこと又は船員の常務として若しくはその時の特殊な状況により必要とされる注意をすることを怠ることによつて生じた結果について、船舶、船舶所有者、船長又は海員の責任を免除するものではない。
〔問題2〕
右図に示すように,次の(1)~(3)の港において総トン数6000トンの動力船Aと総トン数350トンの動力船Bとが,×地点付近で衝突するおそれがある場合,それぞれどちらが避航船となるか。理由とともに述べよ。
(1) 京浜港
(2) 関門港(響新港区を除く。)
(3) 函館港
【出題:H31/04,R04/02,R05/02,R07/02】

(1) 港則法 第18条
第十八条 汽艇等は、港内においては、汽艇等以外の船舶の進路を避けなければならない。
2 総トン数が五百トンを超えない範囲内において国土交通省令で定めるトン数以下である船舶であつて汽艇等以外のもの(以下「小型船」という。)は、国土交通省令で定める船舶交通が著しく混雑する特定港内においては、小型船及び汽艇等以外の船舶の進路を避けなければならない。
3 小型船及び汽艇等以外の船舶は、前項の特定港内を航行するときは、国土交通省令で定める様式の標識をマストに見やすいように掲げなければならない。
(2) 海上衝突予防法 第15条
(横切り船)
第十五条 二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。2 前条第一項ただし書の規定は、前項に規定する二隻の動力船が互いに進路を横切る場合について準用する。
(3) 海上衝突予防法 第15条
〔問題3〕
右図は,港内において,総トン数1000トンの動力船Aと,総トン数200トンの動力船Bとが×地点付近で衝突するおそれがある場合を示す。次の問いに答えよ。
(1) この港が,港則法の国土交通省令で定める船舶交通が著しく混雑する特定港である場合,Aは,どのような信号旗を掲げなければならないか。また,Aはどのような措置をとらなければならないか。
(2) この港が(1)で示した特定港以外の港である場合,Aはどのような措置をとらなければならないか。
【出題:R04/10,R05/07,R06/04】

〔問題4〕
右図は,港内において,出航するA船(総トン数1000トンの動力船)と,P岸壁に向かうB船(総トン数200トンの動力船)とが×地点付近で衝突するおそれがある場合を示す。次の問いに答えよ。
(1) この港が,港則法の国土交通省令で定める船舶交通が著しく混雑する特定港である場合,A船は,自船の大きさを示すために,どのような信号旗を掲げなければならないか。また,A船は,航法上どのような処置をとらなければならないか。
(2) この港が(1)で示した特定港以外の港である場合,A船は,航法上どのような処置をとらなければならないか。
【出題:H29/07,H30/10,R04/04】

(1) 港則法 第18条 第3項,同施行規則8条の4
港則法 第十八条 汽艇等は、港内においては、汽艇等以外の船舶の進路を避けなければならない。
2 総トン数が五百トンを超えない範囲内において国土交通省令で定めるトン数以下である船舶であつて汽艇等以外のもの(以下「小型船」という。)は、国土交通省令で定める船舶交通が著しく混雑する特定港内においては、小型船及び汽艇等以外の船舶の進路を避けなければならない。
3 小型船及び汽艇等以外の船舶は、前項の特定港内を航行するときは、国土交通省令で定める様式の標識をマストに見やすいように掲げなければならない。
港則法施行規則 第八条の四 法第十八条第三項の国土交通省令で定める様式の標識は、国際信号旗数字旗1とする。
港則法 第18条,海上衝突予防法 第17条及び同法 第34条
海上衝突予防法
(保持船)
第十七条 この法律の規定により二隻の船舶のうち一隻の船舶が他の船舶の進路を避けなければならない場合は、当該他の船舶は、その針路及び速力を保たなければならない。
2 前項の規定により針路及び速力を保たなければならない船舶(以下この条において「保持船」という。)は、避航船がこの法律の規定に基づく適切な動作をとつていないことが明らかになつた場合は、同項の規定にかかわらず、直ちに避航船との衝突を避けるための動作をとることができる。この場合において、これらの船舶について第十五条第一項の規定の適用があるときは、保持船は、やむを得ない場合を除き、針路を左に転じてはならない。
3 保持船は、避航船と間近に接近したため、当該避航船の動作のみでは避航船との衝突を避けることができないと認める場合は、第一項の規定にかかわらず、衝突を避けるための最善の協力動作をとらなければならない。(操船信号及び警告信号)
第三十四条 航行中の動力船は、互いに他の船舶の視野の内にある場合において、この法律の規定によりその針路を転じ、又はその機関を後進にかけているときは、次の各号に定めるところにより、汽笛信号を行わなければならない。一 針路を右に転じている場合は、短音を一回鳴らすこと。
二 針路を左に転じている場合は、短音を二回鳴らすこと。
三 機関を後進にかけている場合は、短音を三回鳴らすこと。2 航行中の動力船は、前項の規定による汽笛信号を行わなければならない場合は、次の各号に定めるところにより、発光信号を行うことができる。この場合において、その動力船は、その発光信号を十秒以上の間隔で反復して行うことができる。
一 針路を右に転じている場合は、せん光を一回発すること。
二 針路を左に転じている場合は、せん光を二回発すること。
三 機関を後進にかけている場合は、せん光を三回発すること。3 前項のせん光の継続時間及びせん光とせん光との間隔は、約一秒とする。
4 船舶は、互いに他の船舶の視野の内にある場合において、第九条第四項の規定による汽笛信号を行うときは、次の各号に定めるところにより、これを行わなければならない。
一 他の船舶の右げん側を追い越そうとする場合は、長音二回に引き続く短音一回を鳴らすこと。
二 他の船舶の左げん側を追い越そうとする場合は、長音二回に引き続く短音二回を鳴らすこと。
三 他の船舶に追い越されることに同意した場合は、順次に長音一回、短音一回、長音一回及び短音一回を鳴らすこと。5 互いに他の船舶の視野の内にある船舶が互いに接近する場合において、船舶は、他の船舶の意図若しくは動作を理解することができないとき、又は他の船舶が衝突を避けるために十分な動作をとつていることについて疑いがあるときは、直ちに急速に短音を五回以上鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。この場合において、その汽笛信号を行う船舶は、急速にせん光を五回以上発することにより発光信号を行うことができる。
6 船舶は、障害物があるため他の船舶を見ることができない狭い水道等のわん曲部その他の水域に接近する場合は、長音一回の汽笛信号を行わなければならない。この場合において、その船舶に接近する他の船舶は、そのわん曲部の付近又は障害物の背後においてその汽笛信号を聞いたときは、長音一回の汽笛信号を行うことによりこれに応答しなければならない。
7 船舶は、二以上の汽笛をそれぞれ百メートルを超える間隔を置いて設置している場合において、第一項又は前三項の規定による汽笛信号を行うときは、これらの汽笛を同時に鳴らしてはならない。
8 第二項及び第五項後段の規定による発光信号に使用する灯火は、五海里以上の視認距離を有する白色の全周灯とし、その技術上の基準及び位置については、国土交通省令で定める。
(2) 海上衝突予防法 第15条及び同法第16条
(横切り船)
第十五条 二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。2 前条第一項ただし書の規定は、前項に規定する二隻の動力船が互いに進路を横切る場合について準用する。
(避航船)
第十六条 この法律の規定により他の船舶の進路を避けなければならない船舶(次条において「避航船」という。)は、当該他の船舶から十分に遠ざかるため、できる限り早期に、かつ、大幅に動作をとらなければならない。
〔問題5〕
港則法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(3) 爆発物その他の危険物を積載した船舶は,特定港に入港しようとするときは,どのようにしなければならないか。 【出題:H29/04類,H30/07,R03/04,R05/04】
港の境界外で港長の指揮を受けなければならない。 (港則法第21条)
〔問題6〕
港則法に関する次の問いに答えよ。
(1) 火災が発生したびょう泊中の船舶(汽笛又はサイレンを備えている。)が鳴らさなければならない火災警報について:
【出題:H28/02,H31/02(イ及びウ),R03/07,R06/02】
(ア)船舶がどのような港にあるとき行うか。
(イ)どのような方法で行うか。
(ウ) (イ)の方法は船内のどのようなところに表示しなければならないか。
(2)港則法の規定によると,火災が発生したびょう泊中の船舶(汽笛又はサイレンを備えている。)は,どのような方法で火災警報を行わなければならないか。22/04,25/04(本法の規定によると)【出題:H28/10,H30/02】
(3) 特定港内において,火災が発生したびょう泊中の船舶(汽笛又はサイレンを備えている。)は,どのような方法で火災警報を行わなければならないか。 【出題:R02/04】
(1)(ア) 船舶が特定港内にあるときに行う。
(イ)長音5回の汽笛又はサイレンによる信号を行わなければならない。また,この信号は適当な間隔において繰り返さなければならない。
(ウ) 汽笛又はサイレンの吹聴に従事する者が見易いところに表示しなければならない。
(港則法第30条,港則法第30条の2)
〔問題7〕
港則法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(3) 港長が,特定港内にある者に対し,喫煙又は火気の取扱いを制限し,又は禁止することができるのは,どのような場合か。 (港則法) 【出題:H28/07,H29/10,R01/07,R02/10,R06/10(港則法において)】
特定港内において引火性の液体が浮流しており,火災の発生のおそれがあると認められたとき。(港則法 第36条の2 第2項)
〔問題8〕
港則法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(1) 船舶は,港内においては,どのような場所にみだりにびょう泊してはならないか。
【出題:H30/04,R01/07】
(停泊の制限)
第六条 船舶は、港内においては、次に掲げる場所にみだりにびょう泊又は停留してはならない。
一 ふ頭、桟橋、岸壁、係船浮標及びドックの付近
二 河川、運河その他狭い水路及び船だまりの入口付近
〔問題9〕
港則法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(3) 港則法施行規則によると,港内に停泊する船舶が,適当な予備びょうを投下する準備をし,更に,汽船においては蒸気の発生その他直ちに運航できるように準備をしなければならないのは,どのような場合か。
【出題:R01/10,R03/10,R05/10】
異常な気象又は海象により,当該船舶の安全の保障に支障が生ずるおそれがある場合。(港則法施行規則第7条)
〔問題10〕
港則法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(1) 航路の全部又は一部の区間において追越しが認められる特定港名を記せ。
【出題:H30/04,R02/07,R04/07】
(1)’港則法施行規則により,航路の全部又は一部の区間において追越しが認められている特定港名を記せ。
【出題:H28/04,R06/07】
(1) ① 京浜港(東京西航路) (港則法施行規則第27条の2第1項)
② 名古屋港(東航路・北航路・南航路) (港則法施行規則第29条の2第1項)
③ 広島港 (港則法施行規則第36条第2項)
④ 関門港(関門航路) (港則法施行規則第39条 第2項)
