はじめに
以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「法規」の船員法及び同法施行規則に関する過去問題です。
※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。
船員法及び同法施行規則
〔問題1〕
船長は,他の船舶の遭難を知ったときは,人命の救助に必要な手段を尽くさなければならないが,やむを得ない事由で救助に赴くことができない場合は,どのようにしなければならないか。(船員法及び同法施行規則)
【出題:H29/02,H31/04,R04/07,R06/02】
船員法第14条,同施行規則第3条第1項第3号及び第2項
船員法
(遭難船舶等の救助)
第十四条 船長は、他の船舶又は航空機の遭難を知つたときは、人命の救助に必要な手段を尽さなければならない。但し、自己の指揮する船舶に急迫した危険がある場合及び国土交通省令の定める場合は、この限りでない。
船員法施行規則
(遭難船舶等の救助義務の免除)
第三条 法第十四条ただし書の国土交通省令の定める場合は、次のとおりとする。
三 やむを得ない事由で救助に赴くことができないとき、又は特殊の事情によつて救助に赴くことが適当でないか若しくは必要でないと認められるとき。
② 前項第三号の場合においては、その旨を附近にある船舶に通報し、かつ、他の船舶が救助に赴いていることが明らかでないときは、遭難船舶の位置その他救助のために必要な事項を海上保安機関又は救難機関(日本近海にあつては、海上保安庁)に通報しなければならない。
〔問題2〕
無線電信又は無線電話の設備を有する船舶の船長は,航行に危険を及ぼすおそれのある暴風雨に遭遇したときは,その旨をどこに通報しなければならないか。また,通報しなければならない暴風雨の種類及び程度を述べよ。(船員法及び同法施行規則)
【出題:H28/07,H30/04,R03/10,R06/10】
通報先:付近にある船舶及び海上保安機関(日本近海にあっては,海上保安庁その他の関係機関)
通報対象:熱帯性暴風雨又はその他のビューフォート風力階級10以上の風を伴う暴風雨
船員法第14条の2
(異常気象等)
第十四条の二 国土交通省令の定める船舶の船長は、暴風雨、流氷その他の異常な気象、海象若しくは地象又は漂流物若しくは沈没物であつて、船舶の航行に危険を及ぼすおそれのあるものに遭遇したときは、国土交通省令の定めるところにより、その旨を附近にある船舶及び海上保安機関その他の関係機関に通報しなければならない。
船員法施行規則 第3条の2
第三条の二 法第十四条の二の国土交通省令の定める船舶は、無線電信又は無線電話の設備を有する船舶とする。
② 船長は、次表上段に掲げる船舶の航行に危険を及ぼすおそれのある異常な現象に遭遇したときは、当該異常な現象が存することについて海上保安機関又は気象機関があらかじめ予報又は警報を発している場合を除き、当該異常な現象の種類及び同表下段に掲げる事項を附近にある船舶及び海上保安機関(日本近海にあつては、海上保安庁)に通報しなければならない。ただし、当該異常な現象について、港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)第二十五条、航路標識法(昭和二十四年法律第九十九号)第十六条、水路業務法(昭和二十五年法律第百二号)第二十条、気象業務法(昭和二十七年法律第百六十五号)第七条第二項又は海上交通安全法(昭和四十七年法律第百十五号)第三十九条第一項の規定による報告を行なつたときは、海上保安庁に対する通報は、要しない。
異常な現象の種類 通報すべき事項 1 熱帯性暴風雨又はその他のビューフォート風力階級十以上(風速毎秒二十四・五メートル以上)の風を伴う暴風雨 イ 日時(協定世界時による。以下本表において同じ。)及び位置
ロ 気圧(補正の有無を明らかにすること。)及び前三時間中の気圧の変化の状況
ハ 風向(真方位による。以下本表において同じ。)及び風力(ビューフォート風力階級による。以下本表において同じ。)又は風速
ニ うねりの進行方向(真方位による。)及び周期又は波長その他の海面の状態
ホ 船舶の針路(真方位による。)及び速力2 構造物上にはげしく着氷を生ぜしめる強風 イ 日時及び位置
ロ 気温
ハ 表面水温
ニ 風向及び風力又は風速3 漂流物又は通常の漂流海域外における流氷若しくは氷山 イ 日時及び位置
ロ 形状、漂流方向(真方位による。)及び漂流速度4 沈没物 イ 日時及び位置
ロ 形状及び深度5 その他船舶の航行に危険を及ぼすおそれのある異常な現象 イ 日時及び位置ロ 概要 ③ 法第十四条の二の規定による通報は、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第五十二条第三号に定める安全通信により行なわなければならない。
〔問題3〕
船員法第18条の規定によると,船長は,国土交通省令の定める場合を除いて,どのような書類を船内に備え置かなければならないか。
【出題:H28/04,H30/10,R02/02,R05/07】
(書類の備置)
第十八条 船長は、国土交通省令の定める場合を除いて、次の書類を船内に備え置かなければならない。
一 船舶国籍証書又は国土交通省令の定める証書
二 海員名簿
三 航海日誌
四 旅客名簿
五 積荷に関する書類
六 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二十六条第三項に規定する証明書
② 海員名簿、航海日誌及び旅客名簿に関し必要な事項は、国土交通省令でこれを定める。
〔問題4〕
船員法第25条(危険に対する処置)の規定により,船長は,海員がどのような危険物を所持するときに,その物についてどのような処置をすることができるか。それぞれについて述べよ。
【出題:H28/02,H29/10,R03/04,R05/10】
(危険に対する処置)
第二十五条 船長は、海員が凶器、爆発又は発火しやすい物、劇薬その他の危険物を所持するときは、その物につき保管、放棄その他の処置をすることができる。
〔問題5〕
船員手帳に関する次の問いに答えよ。 (船員法及び同法施行規則)
(1) 船員手帳の再交付を申請しなければならないのは,どのようなときか。
【出題:H29/04,R02/10,R03/07】
(2) 船員手帳の有効期限は,再交付を受けたときからのほか,どのようなときから何年間か。
【出題:H29/04,R02/10,R03/07】
(3) 船員手帳の訂正を申請しなければならないのは,どのようなときか。
【出題:H29/04,R02/10,R03/07】
(1)船員手帳が滅失し,若しくはき損したとき,又は船員手帳の写真が本人であることを認め難くなった場合において写真欄の右側に余白がないとき。(船員法施行規則第32条)
(2) 交付,再交付又は書換えを受けたときから10年間。ただし,航海中にその期限が経過したときは,その航海が終了するまで。【参考】外国人の場合は,5年間 (船員法施行規則第35条)
(3) 船員手帳に記載した本人の氏名又は本籍(外国人にあっては,国籍)に変更があったとき。(船員法施行規則第31条)
〔問題6〕
船員手帳に関する次の問いに答えよ。 (船員法及び同法施行規則)
(1) 乗船中の海員の船員手帳は,誰が保管しなければならないか。
(2) 船員手帳の書換えを申請しなければならないのは,どのようなときか。
(3) (2)の場合は,誰に申請しなければならないか。
【出題:H28/10,H30/07,R04/04】
(1)船長は,海員の乗船中その船員手帳を保管しなければならない。(船員法第50条)
(2) 船員手帳に余白がなくなったとき又は有効期限が経過した時(船員法施行規則第34条)
(3) もよりの地方運輸局長等 (船員法施行規則第34条)
〔問題7〕
船員の労働時間に関する次の問いに答えよ。
(1) 船員の1日当たりの労働時間は,何時間か。
(2) 船員の1週間当たりの労働時間は,基準労働期間について,何時間か。
【出題:R02/07】
〔問題8〕
年少船員の夜間労働の禁止に関する次の問いに答えよ。 (船員法)
(1) 対象となる船員の年齢
(2) 対象となる時間
(3) 作業の種類によって禁止規定が適用されない作業
【出題:H30/02,R01/07,R04/02,R06/07】
(年少船員の夜間労働の禁止)
第八十六条 船舶所有者は、年齢十八年未満の船員を午後八時から翌日の午前五時までの間において作業に従事させてはならない。ただし、国土交通省令の定める場合において午前零時から午前五時までの間を含む連続した九時間の休息をさせるときは、この限りでない。
② 前項の規定は、第六十八条第一項第一号の作業に従事させる場合には、これを適用しない。
③ 第一項の規定は、漁船及び船舶所有者と同一の家庭に属する者のみを使用する船舶については、これを適用しない。
(例外規定)
第六十八条 第六十条から前条までの規定及び第七十二条の国土交通省令の規定は、船員が次に掲げる作業に従事する場合(海員にあつては、船長の命令によりこれらの作業に従事する場合に限る。)には、これを適用しない。
一 人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業
二 防火操練、救命艇操練その他これらに類似する作業
三 航海当直の通常の交代のために必要な作業
② 船長は、補償休日又は休息時間において、前項各号に掲げる作業に自ら従事し、又は海員を従事させたときは、船舶の運航の安全の確保に支障を及ぼさない限りにおいて、当該作業の終了後できる限り速やかに休息をし、又は休息をさせるよう努めなければならない。
〔問題9〕
船長は,発航前に次の事項については,どのようなことを検査しなければならないか。船員法施行規則で規定するところを述べよ。
(1) 積載物の積付け
(2) 喫水
【出題:R01/10,R05/02,R07/02】
(発航前の検査)
第二条の二 船長は、法第八条の規定により、発航前に次に掲げる事項を検査しなければならない。ただし、当該発航の前十二時間以内に第一号に掲げる事項のうち操舵だ設備に係る事項について発航前の検査をしたとき並びに当該発航の前二十四時間以内に第一号(操舵だ設備に係る事項を除く。)、第四号及び第五号に掲げる事項について発航前の検査をしたときは、当該事項については、検査を行わないことができる。
一 船体、機関及び排水設備、操舵だ設備、係船設備、揚錨びよう設備、救命設備、無線設備その他の設備が整備されていること。
二 積載物の積付けが船舶の安定性をそこなう状況にないこと。
三 喫水の状況から判断して船舶の安全性が保たれていること。
四 燃料、食料、清水、医薬品、船用品その他の航海に必要な物品が積み込まれていること。
五 水路図誌その他の航海に必要な図誌が整備されていること。
六 気象通報、水路通報その他の航海に必要な情報が収集されており、それらの情報から判断して航海に支障がないこと。
七 航海に必要な員数の乗組員が乗り組んでおり、かつ、それらの乗組員の健康状態が良好であること。
八 前各号に掲げるもののほか、航海を支障なく成就するため必要な準備が整つていること。
〔問題10〕
遠洋区域を航行区域とする貨物船の船長は,非常配置表に定めるところにより海員をその配置につかせるほか,どのような操練を実施しなければならないか。船員法施行規則に定める操練の種類をあげよ。
【出題:H29/07,R03/02,R04/10,R06/04】
(操練)
第三条の四 前条第一項各号に掲げる船舶における法第十四条の三第二項の非常の場合のために必要な海員に対する操練は、非常配置表に定めるところにより海員をその配置につかせるほか、次に掲げるところにより実施しなければならない。
一 防火操練 防火戸の閉鎖、通風の遮断及び消火設備の操作を行うこと。
二 救命艇等操練 救命艇等の振出し又は降下及びその附属品の確認、救命艇の内燃機関の始動及び操作並びに救命艇の進水及び操船を行い、かつ、進水装置用の照明装置を使用すること。
三 救助艇操練 救助艇の進水及び操船並びにその附属品の確認を行うこと。
四 防水操練 水密戸、弁、舷窓その他の水密を保持するために必要な閉鎖装置の操作を行うこと。
五 非常操舵だ操練 操舵だ機室からの操舵だ設備の直接の制御、船橋と操舵だ機室との連絡その他操舵だ設備の非常の場合における操舵だを行うこと。
六 密閉区画における救助操練 保護具、船内通信装置及び救助器具を使用し、並びに救急措置の指導を行うこと。
七 損傷制御操練 旅客船にあつては、前各号に掲げるところによるほか、復原性計算機の利用、損傷制御用クロス連結管の操作その他の損傷時における船舶の復原性を確保するために必要な作業を行うこと。
八 特定高速船にあつては、前各号に掲げるところによるほか、次の表に定めるところにより実施すること。
| 防火操練 | 火災探知装置、船内通信装置及び警報装置の操作並びに旅客の避難の誘導を行うこと。 |
| 救命艇等操練 | 非常照明装置及び救命艇等に附属する救命設備の操作並びに海上における生存方法の指導を行うこと。 |
| 防水操練 | ビルジ排水装置の操作及び旅客の避難の誘導を行うこと。 |
〔問題11〕
船員法施行規則第44条の2の規定により,船長が「通常配置表」に定めなければならない事項を述べよ。 【出題:R02/04,R05/04】
