はじめに

以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「法規」の海上交通安全法に関する過去問題その1です。
※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。

一般

〔問題1〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(1) 本法の適用海域について説明せよ。 【出題:H29/02,R02/07,R06/02】

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口述試験にもよく出る問題です。

海上交通安全法 第1条第2項をよく読んでお答えください。

(目的及び適用海域)
第一条 この法律は、船舶交通がふくそうする海域における船舶交通について、特別の交通方法を定めるとともに、その危険を防止するための規制を行なうことにより、船舶交通の安全を図ることを目的とする。

2 この法律は、東京湾、伊勢湾(伊勢湾の湾口に接する海域及び三河湾のうち伊勢湾に接する海域を含む。)及び瀬戸内海のうち次の各号に掲げる海域以外の海域に適用するものとし、これらの海域と他の海域(次の各号に掲げる海域を除く。)との境界は、政令で定める。

一 港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)に基づく港の区域
二 港則法に基づく港以外の港である港湾に係る港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第三項に規定する港湾区域
三 漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第六条第一項から第四項までの規定により市町村長、都道府県知事又は農林水産大臣が指定した漁港の区域内の海域
四 陸岸に沿う海域のうち、漁船以外の船舶が通常航行していない海域として政令で定める海域

〔問題2〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。

(1) 右図に示すように,航路をこれに沿って航行している船舶A(巨大船)と航路外から航路に入ろうとする船舶B(漁ろう船等)について:
(ア)Bが,作業を行っているため接近してくる他の船舶の進路を避けることが容易でない国土交通省令に定める船舶である場合,Bはどのような標識を表示しなければならないか。
(イ)互いに接近して衝突するおそれがある場合,Aはどのような航法上の処置をとらなければならないか。
【出題:R01/10,R07/02】

ヒント

(ア)

海上交通安全法 第2条 第2項

2 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 船舶 水上輸送の用に供する船舟類をいう。
二 巨大船 長さ二百メートル以上の船舶をいう。
三 漁ろう船等 次に掲げる船舶をいう。

イ 漁ろうに従事している船舶
ロ 工事又は作業を行つているため接近してくる他の船舶の進路を避けることが容易でない国土交通省令で定める船舶で国土交通省令で定めるところにより灯火又は標識を表示しているもの

海上交通安全法施行規則 第2条 第2項

2 法第二条第二項第三号ロの規定による灯火又は標識の表示は、夜間にあつては第一号に掲げる灯火の、昼間にあつては第二号に掲げる形象物の表示とする。
一 少なくとも二海里の視認距離を有する緑色の全周灯二個で最も見えやすい場所に二メートル(長さ二十メートル未満の船舶にあつては、一メートル)以上隔てて垂直線上に連掲されたもの

二 上の一個が白色のひし形、下の二個が紅色の球形である三個の形象物(長さ二十メートル以上の船舶にあつては、その直径は、〇・六メートル以上とする。)で最も見えやすい場所にそれぞれ一・五メートル以上隔てて垂直線上に連掲されたもの

(イ)海上交通安全法 第3条 第2項

2 航路外から航路に入り、航路から航路外に出、若しくは航路を横断しようとし、若しくは航路をこれに沿わないで航行している漁ろう船等又は航路で停留している船舶は、航路をこれに沿つて航行している巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第九条第二項及び第三項、第十三条第一項、第十四条第一項、第十五条第一項前段並びに第十八条第一項(第三号及び第四号に係る部分に限る。)の規定は、当該巨大船について適用しない。

〔問題3〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(1)法第7条(進路を知らせるための措置)の規定について:
(ア)航路に出入し,又は航路を横断しようとする場合,進路を他の船舶に知らせるための信号による表示(以下「進路信号」という。)を義務づけられているのは,どのような船舶か。
【出題:H29/02,R01/07,R03/10】
(イ)昼間,「進路信号」に用いられるのは,どのような国際信号旗か。
【出題:H29/02,R01/07,R03/10】

(2) 航路又はその付近において,右図(A)及び(B)の国際信号旗を掲げている船舶は,一般に,それぞれどのように航行しようとしている船舶か。
【出題:H28/04,H29/10,H31/02,R02/10,R03/07】

〔問題4〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。

(1) 航路又はその付近において,右図(A)及び(B)の国際信号旗を掲げている船舶は,一般に,それぞれどのように航行しようとしている船舶か。
【出題:H30/04】

ヒント(問題3,4)

海上交通安全法 第7条

(進路を知らせるための措置)
第七条 船舶(汽笛を備えていない船舶その他国土交通省令で定める船舶を除く。)は、航路外から航路に入り、航路から航路外に出、又は航路を横断しようとするときは、進路を他の船舶に知らせるため、国土交通省令で定めるところにより、信号による表示その他国土交通省令で定める措置を講じなければならない。

海上交通安全法施行規則 第6条 第1項

(進路を知らせるための措置)
第六条 法第七条の国土交通省令で定める船舶は、信号による表示を行う場合にあつては総トン数百トン未満の船舶とし、次項に掲げる措置を講じる場合にあつては船舶自動識別装置を備えていない船舶及び船員法施行規則(昭和二十二年運輸省令第二十三号)第三条の十六ただし書の規定により船舶自動識別装置を作動させていない船舶とする。

2 法第七条の国土交通省令で定める措置は、船舶自動識別装置により目的地に関する情報を送信することとする。

3 法第七条の規定による信号による表示は、別表第二の上欄に掲げる船舶について、それぞれ同表の下欄に規定する信号の方法により行わなければならない。

海上交通安全法 第22条

(巨大船等の航行に関する通報)
第二十二条 次に掲げる船舶が航路を航行しようとするときは、船長は、あらかじめ、当該船舶の名称、総トン数及び長さ、当該航路の航行予定時刻、当該船舶との連絡手段その他の国土交通省令で定める事項を海上保安庁長官に通報しなければならない。通報した事項を変更するときも、同様とする。
一 巨大船
二 巨大船以外の船舶であつて、その長さが航路ごとに国土交通省令で定める長さ以上のもの
三 危険物積載船(原油、液化石油ガスその他の国土交通省令で定める危険物を積載している船舶で総トン数が国土交通省令で定める総トン数以上のものをいう。以下同じ。)
四 船舶、いかだその他の物件を引き、又は押して航行する船舶(当該引き船の船首から当該物件の後端まで又は当該押し船の船尾から当該物件の先端までの距離が航路ごとに国土交通省令で定める距離以上となる場合に限る。)

(3)(A)  航路の出入口を出てから左転するか,これに類する場合。(第2代表旗+P旗)

(B)  航路を横断するか,これに類する場合。(第1代表旗+C旗)(海上交通安全法第7条)

〔問題5〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(1) 巨大船と巨大船以外の船舶と行き会うことが予想される場合,巨大船以外の船舶が航路外で待機するよう管制されることがあるのは,どの航路か。また,この場合,長さ何メートル以上の船舶が対象となるか。
【出題:H28/07,H30/02】
(1)’海上交通安全法及び同法施行規則において,巨大船と巨大船以外の船舶と行き会うことが予想される場合,巨大船以外の船舶が航路外で待機するよう管制されることがあるのは,どの航路か。また,この場合,長さ何メートル以上の船舶が対象となるか。
【出題:R07/02】
(2) 昼間,本法の適用海域を航行中の巨大船である危険物積載船は,どのような標識を掲げなければならないか。 【出題:R02/02】

ヒント

海上交通安全法 第10条の2

(航路外での待機の指示)
第十条の二 海上保安庁長官は、地形、潮流その他の自然的条件及び船舶交通の状況を勘案して、航路を航行する船舶の航行に危険を生ずるおそれのあるものとして航路ごとに国土交通省令で定める場合において、航路を航行し、又は航行しようとする船舶の危険を防止するため必要があると認めるときは、当該船舶に対し、国土交通省令で定めるところにより、当該危険を防止するため必要な間航路外で待機すべき旨を指示することができる。

海上交通安全法施行規則 第8条 第2項

航路:伊良湖水道航路
対象船:長さ130メートル以上の船舶
航路:水道航路
対象船:長さ70メートル以上の船舶

海上交通安全法 第27条

(巨大船及び危険物積載船の灯火等)
第二十七条 巨大船及び危険物積載船は、航行し、停留し、又はびよう泊をしているときは、国土交通省令で定めるところにより灯火又は標識を表示しなければならない。

2 巨大船及び危険物積載船以外の船舶は、前項の灯火若しくは標識又はこれと誤認される灯火若しくは標識を表示してはならない。

海上交通安全法施行規則 第22条

(巨大船及び危険物積載船の灯火等)
第二十二条 法第二十七条第一項の規定による灯火又は標識の表示は、次の表の上欄に掲げる船舶の区分に応じ、夜間は、それぞれ同表の中欄に掲げる灯火を、昼間は、それぞれ同表の下欄に掲げる標識を最も見えやすい場所に表示することによりしなければならない。

船舶灯火標識
巨大船少なくとも二海里の視認距離を有し、一定の間隔で毎分180回以上200回以下のせん光を発する緑色の全周灯1個その直径が0.6メートル以上であり、その高さが直径の2倍である黒色の円筒形の形象物2個で1.5メートル以上隔てて垂直線上に連掲されたもの(海上衝突予防法第28条の規定により円筒形の形象物1個を表示する巨大船については、その形象物と同一の垂直線上に連掲されないものに限る。)
危険物積載船少なくとも二海里の視認距離を有し、一定の間隔で毎分120回以上140回以下のせん光を発する紅色の全周灯1個縦に上から国際信号旗の第一代表旗一旒(りゆう)及びB旗一旒

〔問題6〕

海上交通安全法の適用海域内にあって,航路及びその周辺の政令で定める海域以外の海域において,海底電線の敷設作業を行っているため,接近してくる他の船舶の進路を避けることができない航行中の船舶は,夜間及び昼間,それぞれどのような灯火又は標識(形象物)を表示しなければならないか。【出題:H31/04,R04/04(本法)】

ヒント

海上交通安全法 第31条
海上衝突予防法 第27条 第2項

〔問題7〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(1) 航路の付近にある国土交通省令で定める2地点間を航行しようとするとき,「航路航行義務」の規定に従わないで航行することができるのは,どのような船舶か。4つあげよ。
【出題:H28/02,H30/02,R02/10,R04/07,R06/07】

ヒント

海上交通安全法 施行規則 第3条

(航路航行義務)
第三条 長さが五十メートル以上の船舶は、別表第一各号の中欄に掲げるイの地点とロの地点との間を航行しようとするとき(同表第四号、第五号及び第十二号から第十七号までの中欄に掲げるイの地点とロの地点との間を航行しようとする場合にあつては、当該イの地点から当該ロの地点の方向に航行しようとするときに限る。)は、当該各号の下欄に掲げる航路の区間をこれに沿つて航行しなければならない。ただし、海洋の調査その他の用務を行なうための船舶で法第四条本文の規定による交通方法に従わないで航行することがやむを得ないと当該用務が行なわれる海域を管轄する海上保安部の長が認めたものが航行しようとするとき、又は同条ただし書に該当するときは、この限りでない。

海上交通安全法 第4条

(航路航行義務)
第四条 長さが国土交通省令で定める長さ以上である船舶は、航路の附近にある国土交通省令で定める二の地点の間を航行しようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、当該航路又はその区間をこれに沿つて航行しなければならない。ただし、海難を避けるため又は人命若しくは他の船舶を救助するためやむを得ない事由があるときは、この限りでない。

海上交通安全法 第24条 第1項
海上交通安全法 第24条 第2項
海上交通安全法 第24条 第3項

(緊急用務を行う船舶等に関する航法の特例)
第二十四条 消防船その他の政令で定める緊急用務を行うための船舶は、当該緊急用務を行うためやむを得ない必要がある場合において、政令で定めるところにより灯火又は標識を表示しているときは、第四条、第五条、第六条の二から第十条まで、第十一条、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)、第二十条第一項又は第二十一条第一項の規定による交通方法に従わないで航行し、又はびよう泊をすることができ、及び第二十条第四項の規定による通報をしないで航行することができる。
2 漁ろうに従事している船舶は、第四条、第六条から第九条まで、第十一条、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)、第二十条第一項又は第二十一条第一項の規定による交通方法に従わないで航行することができ、及び第二十条第四項又は第二十二条の規定による通報をしないで航行することができる。
3 第三十六条第一項の規定による許可(同条第八項の規定によりその許可を受けることを要しない場合には、港則法第三十一条第一項(同法第四十三条において準用する場合を含む。)の規定による許可)を受けて工事又は作業を行つている船舶は、当該工事又は作業を行うためやむを得ない必要がある場合において、第二条第二項第三号ロの国土交通省令で定めるところにより灯火又は標識を表示しているときは、第四条、第六条の二、第八条から第十条まで、第十一条、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)、第二十条第一項又は第二十一条第一項の規定による交通方法に従わないで航行し、又はびよう泊をすることができ、及び第二十条第四項の規定による通報をしないで航行することができる。

〔問題8〕

航路における一般的航法によると,漁ろう船等以外の船舶が,航路をこれに沿って航行している他の船舶と衝突するおそれがあるときに,その船舶の進路を避けなければならないのは,航路外から航路に入ろうとし,又は航路から航路外に出ようとする場合のほか,どのような場合か。
【出題:H28/07,H29/07,H31/04,R05/10】

ヒント

海上交通安全法 第3条 第1項

(避航等)
第三条 航路外から航路に入り、航路から航路外に出、若しくは航路を横断しようとし、又は航路をこれに沿わないで航行している船舶(漁ろう船等を除く。)は、航路をこれに沿つて航行している他の船舶と衝突するおそれがあるときは、当該他の船舶の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第九条第二項、第十二条第一項、第十三条第一項、第十四条第一項、第十五条第一項前段及び第十八条第一項(第四号に係る部分に限る。)の規定は、当該他の船舶について適用しない。

〔問題9〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(1) 航路をこれに沿って航行する船舶が,その航路の全区間において法第5条(速力の制限)の規定を守らなければならない航路をあげよ。
【出題:H28/02】

ヒント

海上交通安全法 第5条

国土交通省令で定める航路の区間においては、船舶は、当該航路を横断する場合を除き、当該区間ごとに国土交通省令で定める速力(対水速力をいう。以下同じ。)を超える速力で航行してはならない。ただし、海難を避けるため又は人命若しくは他の船舶を救助するためやむを得ない事由があるときは、この限りでない。

海上交通安全法施行規則 第4条

法第五条の国土交通省令で定める航路の区間は、次の表の上欄に掲げる航路ごとに同表の中欄に掲げるとおりとし、当該区間に係る同条の国土交通省令で定める速力は、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。

航路の名称航路の区間速力
浦賀水道航路航路の全区間12ノット
中ノ瀬航路航路の全区間12ノット
伊良湖水道航路航路の全区間12ノット
備讃瀬戸東航路男木島灯台(北緯三十四度二十六分一秒東経百三十四度三分三十九秒)から三百五十三度に引いた線と航路の西側の出入口の境界線との間の航路の区間12ノット
備讃瀬戸北航路航路の東側の出入口の境界線と本島ジョウケンボ鼻から牛島北東端まで引いた線との間の航路の区間12ノット
備讃瀬戸南航路牛島ザトーメ鼻から百六十度に引いた線と航路の東側の出入口の境界線との間の航路の区間12ノット
水島航路航路の全区間12ノット

〔問題10〕

海上交通安全法及び同法施行規則に関する次の問いに答えよ。
(2) 航路を航行しようとするときに,船長が,あらかじめ,当該船舶の名称,総トン数及び長さ,当該航路の航行予定時刻,当該船舶との連絡手段その他の国土交通省令で定める事項を海上保安庁長官に通報しなければならないのは,どのような船舶か。
【出題:H29/04,R04/02】

ヒント

海上交通安全法 第22条

(巨大船等の航行に関する通報)
第二十二条 次に掲げる船舶が航路を航行しようとするときは、船長は、あらかじめ、当該船舶の名称、総トン数及び長さ、当該航路の航行予定時刻、当該船舶との連絡手段その他の国土交通省令で定める事項を海上保安庁長官に通報しなければならない。通報した事項を変更するときも、同様とする。
一 巨大船
二 巨大船以外の船舶であつて、その長さが航路ごとに国土交通省令で定める長さ以上のもの
三 危険物積載船(原油、液化石油ガスその他の国土交通省令で定める危険物を積載している船舶で総トン数が国土交通省令で定める総トン数以上のものをいう。以下同じ。)
四 船舶、いかだその他の物件を引き、又は押して航行する船舶(当該引き船の船首から当該物件の後端まで又は当該押し船の船尾から当該物件の先端までの距離が航路ごとに国土交通省令で定める距離以上となる場合に限る。)