今回は、機関の口述で定番の発電機の並列運転について、閲覧者のリクエストにお応えしたいと思います。
並列運転て何?
さて、そもそも発電機の並列運転て何?という方もいらっしゃいますと思いますので、そこから説明しましょう。
船では、色んな機器が電動で動いております。また、照明や居室のコンセントなど、色んなところで電気が使われております。
また、航海中、出入港時、停泊中と必要な電力が変化します。
特に、出入港時には、係船機を使用したり、バウスラスター(原動機駆動の場合もある)のモーターを回したりと、より多くの電気が必要になってきます。
この電気を発電機でつくるのですが、もちろん、発電機1台の発電能力には、限界があります。例えば、航海中は、1台で十分電気を賄えても、出入港時には、係船機やスラスターの使用などにより、1台の発電機では能力が足らなくなります。そこで、もう1台発電機を運転して、2台で同時に電気を供給しましょうといった場合に、発電機の並列運転を行います。
操作方法
例えば、今、船内に電気を供給しているのが、1号発電機だとしましょう。
この場合、1号発電機でつくった電気は、No.1主配電盤というところに供給され、そこから船内電気の母線に電気が供給されます。
ここで、2号発電機を運転して、1号発電機と2号発電機で船内に供給しようとします。
まずは、2号発電機を起動して、各部の点検を行い、異常がないことを確認します。
次に、2号発電機でつくられた電気の周波数と電圧を確認します。
通常、電圧の方は、配電盤等の異常がない限り、450Vを示しています。
問題は、周波数です。通常、船内の電源は、60Hzです。
もちろん、1号発電機も60Hzで電気を供給していると思います。
まずは、2号発電機で発電した電気が同期盤で60Hzであることを確認して下さい。
同期盤には、1号発電機から供給している電力と周波数も表示されています。
次に、同期検定器切替えハンドルを2号機起動(メーカーにより表示が異なる場合があります)に切替えます。
同期検定器切替えハンドル
同期検定器の針が回り始めます。2号機の周波数が高い場合は、時計回り、1号機の周波数の方が高い場合は、反時計回りに回ります。
2号機のガバナモーターハンドルを操作し、同期検定器が時計回りに回るように周波数(2号発電機の回転数)を調整します。
同期検定器
この時、同期検定器の回転は、時計回りで、ゆっくり回るようにします。
ガバナモーターハンドル
気中遮断器のハンドルを引き(回しては駄目!!)、同期検定器の針が真上に来た瞬間に気中遮断器のハンドルを投入の方向に回します。
そうすると、気中遮断器(2号発電機と船内供給の母線を繋ぐブレーカーみたいなもの)が入ります。
うまく入ると、同期検定器の針は、真上で止まります。
うまくいったら、同期検定器を切りましょう(同期検定器操作ハンドルを断又は切)。
その後、1号発電機の負荷を2号発電機へ移していきます。
やり方は、2号発電機のガバナモーターを上昇、1号機発電機のガバナモーターを下降に同時に動かします。
この時、一気に移すのではなく、1秒ぐらいカチッ、と音がしたら、ハンドルを元に戻して、1号2号発電機の電力計の表示が変化することを確認します。
動いたら、また同じ動作を行います。
最終的に、1号及び2号発電機の電力計が同じぐらいの負荷になったら並列運転の操作は終了です。
※ 自動で並列運転が出来る同期盤の場合、並列運転を行う際、自動と手動とを切り替える必要があります。
並列運転は、バトンリレー?
とりあえず、今回は、操作方法を説明しました。
私が、練習船に乗っていた時に、士官は、発電機の並列運転をリレーのバトンの受け渡しに例えていました。
現在、電気を供給している発電機を現在の走者、後から起動した発電機を次の走者に例え、バトンを負荷に例えていました。
バトンを円滑に受け渡すためには、次の走者が若干早めに走る必要があると、その走る速さを周波数として考えるように言われました。
ここでは、同期の話が出てきませんでしたが、同期とは、交流発電機で発生した交流電圧の波の波長を合わせることです。周波数が異なれば、この波が重なることがありませんし、波の上下のタイミングを合わせないと波が重なることはありません。並列運転とは、この波を合わせる動作が重要となります。そのために、周波数の確認と、同期検定器で波の点が合った瞬間に気中遮断器を投入するようにしているのです。
同期に関する記事を追加しました(2017年5月31日更新)