はじめに

以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「運用」の船体構造、整備、復原性及び損傷制御(4)に関する過去問題です。

※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。

復原性及びトリムに関する理論及び要素

喫水による載貨重量の測定

〔問題〕

うねり等により水面の上下動があるときは,どのようにして正しく喫水を読みとればよいか。
【出題:H28/10,H29/07,H31/02,R01/07,R02/04,R04/04,R05/07,R06/10】

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大きな船になると,少しの喫水の違いで何トンも積載量が異なります。このため,縄梯子を使用して,海面近くまで降り,喫水を読取りを行ったりします。

計算問題

〔問題1〕

排水量75000トンの船が,海水中から河口の港へ移動し,河水中に浮かんだときの喫水の変化量を求めよ。また,海水中と同じ喫水で浮かぶためには,バラストタンクの海水を何トン排出すればよいか。海水中におけるTPC(毎cm排水トン数)は60トン,海水及び河水の比重{密度}は,それぞれ1.025{1025kg/cm3}及び1.000{密度1000kg/cm3}とする。なお,トリムの変化は考慮しないものとする。
注:{ }内の数値は,SI(国際単位系)によるものである。計算はどちらで行ってもよい。
【出題:H21/10】

模範解答

① 海水中から河口港へ移動したために生じる喫水の変化量がΔdcmとすると,
W=排水量(75000トン)
T=毎cm排水トン数(60トン):TPC:cargo1トンで喫水が何センチ深くなるか:通称:トンパー
ρ=海水比重(1.025)(密度=1025kg/cm3
ρf=河水比重(1.000)(密度=1000kg/cm3

② 海水中と同じ喫水で浮かぶためのバラスト海水排出量をwとすると

=1829(トン)

答:31.25cm,1829トン

上記のような問題様式で、以下の値で問題が出題されています。

〔H31/04〕排水量12100トン,TPC:28.0トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.000{密度1000kg/cm3}

〔R03/07〕排水量19000トン,TPC:26トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.000{密度1000kg/cm3}

〔問題2〕

排水量17000トンの船が,船首喫水8.50m,船尾喫水9.00mで海水中に浮かんでいる。この船が河口の港へ移動し,河水中に浮かんだときの平均喫水を求めよ。ただし,海水中におけるTPC(毎cm排水トン数)は27.0トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.005{密度1005kg/cm3}とする。
注:{ }内の数値は,SI(国際単位系)によるものである。計算はどちらで行ってもよい。
【出題:H22/04】

上記のような問題様式で、以下の値で問題が出題されています。

〔H29/04〕排水量15000トン,船首喫水5.95m,船尾喫水6.85m,TPC:32.0トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.002{密度1002kg/cm3}

〔H31/02〕排水量12000トン,船首喫水5.99m,船尾喫水6.87m,TPC:27.0トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.010{密度1010kg/cm3}

〔R03/04〕排水量16000トン,船首喫水7.70m,船尾喫水8.20m,TPC:21.0トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.005{密度1005kg/cm3}

〔R05/02〕排水量14500トン,船首喫水5.90m,船尾喫水6.55m,TPC:21.0トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.002{密度1002kg/cm3}

〔R07/02〕排水量12700トン,船首喫水5.80m,船尾喫水6.15m,TPC:20.0トン,海水及び河水の比重はそれぞれ1.025{密度1025kg/cm3}及び1.005{密度1005kg/cm3}

〔問題3〕

甲丸は,河水比重1.011{密度1011kg/cm3}の港に,平均喫水7.50mで入港し,平均喫水6.45mになるまで貨物を陸揚げした。揚げた貨物のトン数を求めよ。ただし,停泊中の燃料油及び清水等の消費は考慮しないものとする。また,海水比重1.025{密度1025kg/cm3}における甲丸のTPC(毎cm排水トン数)は27.0トンである。
注:{ }内の数値は,SI(国際単位系)によるものである。計算はどちらで行ってもよい。
【出題:H20/07】

模範解答

V:入港時の排水容積,W:入港時の排水トン数,V’:貨物陸揚げ後の排水容積
W’:貨物陸揚げ後の排水トン数,ρf:河水比重,ρs:海水比重,w:陸揚げした貨物のトン数
Aw:水線面積,Δd:貨物を陸揚げすることによる喫水の変化量とすると,
w=W-W’

・・・・・①

であるから,①に代入すると

=2796.3 トン 答:2796.3トン

上記のような問題様式で、以下の値で問題が出題されています。

〔H30/02〕甲丸,河水比重1.010{密度1010kg/cm3},平均喫水9.70mで入港 → 平均喫水8.83mになるまで揚げ荷。海水比重1.024{密度1024kg/cm3}における甲丸のTPC:48.4トン

〔R02/07〕甲丸,河水比重1.008{密度1008kg/cm3},平均喫水6.250mで入港 → 平均喫水5.143mになるまで揚げ荷。海水比重1.025{密度1025kg/cm3}における甲丸のTPC:31.2トン

〔R04/04〕甲丸,河水比重1.010{密度1010kg/cm3},平均喫水9.38mで入港 → 平均喫水7.95mになるまで揚げ荷。海水比重1.025{密度1025kg/cm3}における甲丸のTPC:49.5トン

〔R06/10〕甲丸,河水比重1.012{密度1012kg/cm3},平均喫水9.06mで入港 → 平均喫水8.185mになるまで揚げ荷。海水比重1.025{密度1025kg/cm3}における甲丸のTPC:48.0トン

〔問題4〕

甲丸は,海水比重1.025{密度1025kg/cm3}のA港を排水量13000トン,7.00mの等喫水で出港し,海水比重1.020{密度1020kg/cm3}のB港まで,燃料油200トン,清水15トンを消費する予定である。B港入港の予想喫水を求めよ。ただし,TPC(毎cm排水トン数)は20.5トン,MTC(トリムを1㎝変えるのに要するモーメント)は150t-m{1500kN・m}とする。また,浮面心は船体中央で,燃料油及び清水の各タンクの重心は,船体中心からそれぞれ38m前方及び10m後方にあり,これらは変わらないものとする。
注:{ }内の数値は,SI(国際単位系)によるものである。計算はどちらで行ってもよい。

模範解答

(1)まずは,現在の海水比重で燃料と水を消費した場合における喫水とトリムの変化量を求めます。

① 燃料と清水の消費からの喫水変化

燃料及び清水の消費量を「w1」及び「w2」とし毎cm排水トン数を「TPC」とすると

② 燃料と清水の消費によるトリム変化量(Δt)

浮面心からの燃料面タンク及び清水タンクの重心までの距離をl1,l2とし,毎cmトリムモーメントをMTCとすると

となる。この時,符号が(+)であるため,船尾トリムが増加する。

③ トリム変化に伴う船首及び船尾喫水の変化量Δdf及びΔdaを求める。
浮面心からの船首及び船尾までの距離をf及びaとし,船の長さをLとすると,

このため,トリム変化に伴い船首喫水は25.7cm減少し,船尾喫水は25.7cm増加する。

(2)海水比重の異なるB港へ移動したために生じる喫水変化量Δd2を求める。

B港における排水量をW,A港の海水比重をρA,B港の海水比重をρBとすると,

よって,比重変化に伴い平均喫水が2.3cm増加する。

(3)B港入港の予想喫水は(ア)(イ)(ウ)(エ)より,

予想船首喫水:df’ =df-Δd1+Δdf+Δd2
=700.0-11.0-25.7+2.3=665.6≒666(cm)

予想船尾喫水:da’=da-Δd1+Δda+Δd2
=700.0-11.0+25.7+2.3=717.0(cm)

答:船首喫水6.66m,船尾喫水7.17m

上記のような問題様式で、以下の値で問題が出題されています。
【出題:H20/10】

〔H28/07〕甲丸,海水比重1.025{密度1025kg/cm3},排水量11000トン,7.00mの等喫水で出港,海水比重1.020{密度1020kg/cm3}のB港,燃料油250トン,清水28トンを消費する予定。TPC:19.0トン,MTC:136t-m{1360kN・m}。燃料油及び清水の各タンクの重心:船体中心から36m前方及び14m後方

〔H30/04〕甲丸,海水比重1.025{密度1025kg/cm3},排水量11000トン,6.20mの等喫水で出港,海水比重1.021{密度1021kg/cm3}のB港,燃料油270トン,清水33トンを消費する予定。TPC:27.0トン,MTC:230t-m{2300kN・m}。燃料油及び清水の各タンクの重心:船体中心から40m前方及び18m後方