はじめに

以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「運用」の〔気象〕気象要素・各種天気系の特徴(2)に関する過去問題です。

※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。

各種天気系の特徴

気団

〔問題〕

右図は,季節に応じて日本に移動してくる各種の気団の経路を示した略図である。次の問いに答えよ。
(1) ①~⑤の各気団の名称及びそれぞれが日本に移動してくる季節を記せ。
【出題:R01/10,R05/07,R05/04,R06/07】
(2) ①及び④は,発源地においては,それぞれどのような性質の気団か。
【出題:R01/10,R03/07,R05/04,R06/07】

解答

(1) ① シベリア気団:主に冬季,② オホーツク海気団:主に梅雨期
③ 揚子江気団:春季または秋,④ 小笠原高気圧:主な夏季,⑤ 熱帯気団:主に夏季

(2) ① シベリア気団:寒冷・乾燥の気団, ④ 小笠原気団:温暖・多湿

〔問題〕

次の(1)及び(2)の霧は,それぞれどのような場合に発生するか。
(1) 蒸気霧 【出題:H28/04,R02/02, ,R03/10,R05/10,R06/04】
(2) 前線霧 【出題:H28/04,R02/02,R05/10,R06/04】
(3) 放射霧(ふく射霧) 【出題:【出題:H29/07,R01/07,R03/10,R06/07】
(4) 移流霧 【出題:H29/07,R01/07,R06/07】

解答

(1)暖かい海面上に冷たい空気が流れ込むと,海面から急激に蒸発が起こる。蒸気霧は,その水蒸気が冷たい空気で冷やされて発生する霧である。

(2)前線から降る比較的暖かい雨滴が地表面に到達する間に,常に蒸発が起こるため,湿度が高い状態になる。前線霧は,この蒸発によって潜熱(気化熱)が奪われ温度が下がることによって生じる霧である。

(3)良く晴れた日の夜間では,放射による放熱量が大きいため,地表面に接する空気は次第に冷却され,露点温度に達すると霧が発生する。この時の霧を放射霧という。風力2程度の時に最も発達し,風速があまり大きいと発生しない。

(4)湿った暖かい空気塊(または気団)が冷たい地表面上に移動してくると空気塊の下層部が冷却されて霧を生じる。この時の霧を移流霧という。移流霧は風がかなり強くても発生するが,風速2~3m/secくらいで風が暖かい地面から続けて吹くと良く発生する。

〔問題〕

次の(1)~(3)のように発生する霧は,それぞれ何霧といわれているか。
(1) 冷たい海面上に湿った暖かい空気が流れてきて,下方から冷却されて発生する。
(2) 暖かい海面上に冷たい空気が流れてきて,蒸発した水蒸気が冷たい空気中で冷やされ発生する。
(3) 温暖前線が接近するとき,その前方で降る雨が前線面の下方の寒気の中で蒸発し,その水蒸気が凝結して発生する。
【出題:R01/10】

解答

(1) 移流霧
(2) 蒸気霧
(3) 前線霧

風・気圧傾度力

〔問題1〕

突風は一般にどのような場合に発生するか。成因別に3つあげて説明せよ。
【出題:H29/04,H30/10,R02/10,R04/10】

解答

以下より3つを選んで解答する。

・ 寒気の吹き出しによる突風(寒気突風)

冬季,季節風の吹き出し時に低気圧の後面に進入してくる寒気は,液状的に日本近海へやってくることと,下層から暖められることによって気層が不安定化して,突風となる。

・暖気の吹き込みによる突風

春先から春にかけて,日本海側を通る低気圧が急速に発達移動するときに,太平洋岸から本邦は低気圧の暖域に入り,南よりの強い風が吹く。それに伴って起こる突風である。
春一番,フェーン現象がこれに付随している。

・不安定線に伴う突風(暖気突風)

不安定線は寒冷前線の先行現象として現れ,最初,温帯低気圧の暖域である寒冷前線付近に形成される。寒冷前線から離れるように東方へ移動しながら突風雷雨をもたらす。幅は,100kmぐらいで線上の狭いもので,寿命は短い。発達した低気圧に熱帯気団が進入しているとき,東シナ海周辺で見られる現象で,スコールラインとも呼ばれる。

・寒冷前線に伴う突風

寒冷前線に伴い,前線前後の風向・風速の不連続や前線通過中の寒気の侵入によって発生する。

〔問題2〕

右図は,北半球における地上風(⇒)が,ア~ウの3力に関係があることを示す。ア~ウはそれぞれ何という力か。ただし,縦の平行線は等圧線を示し,それぞれの気圧はヘクトパスカル(hPa)で表されている。
【出題:(気圧:992,1000,1008)H29/10】
【出題:(気圧:1004,1012,1020)H31/02,R03/04,R06/10】

※ 出題時により等圧線の気圧が異なります

解答

ア:気圧傾度力
イ:コリオリ力
ウ:摩擦力

〔問題3〕

気圧の傾き(気圧傾度)に関する次の問いに答えよ。
(1) 気圧の傾きとは何か。
【出題:H28/02,H31/04,R04/07】
(2) 気圧の傾きの大小と等圧線の間隔及び風の強弱とは,どのような関係にあるか。
【出題:H28/02,H31/04,R04/07】

解答

(1) 単位距離についての気圧の下がる割合。
(2) 気圧傾度の大きい場合は等圧線の間隔は狭く,風は強くなる。

〔問題4〕

気圧の傾き(気圧傾度)と風速の関係に関する次の文のうち誤っているものはどれか。
(1) 風速は気圧傾度に比例する。
(2) 気圧傾度が同じなら,高気圧の方が低気圧よりも風速が大きい。
(3) 気圧傾度が同じなら,高緯度ほど風速は大きい。
(4) 気圧傾度が同じなら,上層ほど風速は大きい。
【出題:H29/02,R02/07】

解答

(3)が間違い