はじめに

以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「運用」の船体構造、整備、復原性及び損傷制御(3)に関する過去問題です。

※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。

復原性及びトリムに関する理論及び要素

重心.浮心. メタセンタ, GM,復原力,乾舷その他の復原性に関する要素

〔問題1〕

船の復原性に関する次の用語の意味をそれぞれ述べよ。
(1) 横メタセンタ (2) 復原てこ (3) 初期復原力
【出題:H29/07,H30/07,R03/02,R06/02】

解答

(1) 船が直立時における浮力の作用線(図の一点鎖線)と,横方向にごくわずかに傾いたときの浮力(図の青矢印)の作用線との交点(図のM)をいう。

(2) 船の重心(図のG)から浮力の作用線に向けて伸ばした垂線との交点(図のZ)までの距離(GZ)をいう。

(3) 船の排水量(W)と復原てこ(GZ)との相乗積(W×GZ)が復原力であるが,浮力の作用線が横メタセンタを通る小傾斜角θ度傾斜においては,GZ=GM・sinθ(θは傾斜角)となることから,この傾斜の範囲における復元力を初期復原力といい,W・GM・sinθで表す。

〔問題2〕

復原力に関して述べた次の(A)と(B)の文について,それぞれの正誤を判断し,下のうちからあてはまるものを選べ。

(A)静的復原力は,排水量Wと復原てこGZとの積(W×GZ)で表される。
(B)復原てこGZは,船の傾斜が増すにつれてしだいに小さくなる。

(1) (A)は正しく,(B)は誤っている。
(2) (A)は誤っていて,(B)は正しい。
(3) (A)も(B)も正しい。
(4) (A)も(B)も誤っている。
【出題:H28/07(類),R05/02】

解説

(B)復原てこGZは,船の傾斜が増すにつれて次第に大きくなり,最大値に達した後,次第に減少し0となる。

解答

(1)

〔問題3〕

GMの減少について述べた次の(A)と(B)の文について,それぞれの正誤を判断し,下のうちからあてはまるものを選べ。

(A) デリックで甲板上の重量物をつり上げるとき,重量物が甲板から離れた瞬間におけるGMの減少は,重量物をデリックブームの先端までつり上げるのと同じになる。
(B) 液体の自由表面による見掛けのGMの減少は,自由表面の形状にかかわりなく,その面積と液体の密度によって決まる。

(1) (A)は正しく,(B)は誤っている。
(2) (A)は誤っていて,(B)は正しい。
(3) (A)も(B)も正しい。
(4) (A)も(B)も誤っている。
【出題:H31/04,R03/04】

解答

(1)

解説

(A)力はその作用線上であれば移動してもその効果は同じであるから,下図に示すように,gに作用する場合もg’に作用する場合も効果は等しい。

(B)液体の自由表面による重心の見かけの上昇量GG0は,次式で表される。

GG00×i÷W

iは,「自由表面の慣性モーメント」で,自由表面の形状により変化する。

〔問題4〕

復原力について述べた次の文の[ ]の中にあてはまる語句を番号とともに記せ。

船体に働く重力は,常に船の[ (1) ]を通って鉛直下方に向かう。船の没水部の体積の中心を[ (2) ]といい,[ (2) ]を通って鉛直上方に向かう力を浮力という。
船が水に浮かび直立しているときの浮力の作用線と,横方向にわずかに傾いたときの浮力の作用船との交点を[ (3) ]という。船が,わずかに横傾斜したとき,[ (1) ]が[ (3) ]の下方にあるときは,重力と浮力による偶力が船をもとの位置にもどす方向に働く。この偶力のモーメントを復原力という。
【出題:H29/04,R03/10,R06/04】

解答

(1) 重心 (2) 浮心 (3) 横メタセンタ

〔問題5〕

船が小角度に横傾斜した場合の復原力の大小は,船の重心位置の高低に関係がある理由を述べよ。
【出題:H29/02,R02/07,R04/02】

解答

船の排水量:W,横傾斜角:θ,メタセンタ高さ:GMとすると,傾斜角が小角度であるので
復元力=W×GMsinθと表せる。

小角度傾斜においては,W及びθが一定のとき復原力はGMの大小に比例するが,横メタセンタ(M:浮力と船体中心線との交点)位置はほぼ一定である。したがってGMの大小は船体重心位置Gの高低に関係する。よって,復原力の大小は船体重心位置Gの高低に関係する。

同調作用、動揺周期

〔問題〕

GM(横メタセンタ高さ)1.30mの船が,A港出航直後に横揺れ周期を測定したところ24秒であったが,B港入航直前には横揺れ周期は28秒となった。この船のB港入航直前のGMを求めよ。
【出題:22/02】

上記のような問題様式で、以下の値で問題が出題されています。
〔H28/02〕GM1.4m,横揺れ周期21秒→横揺れ周期24秒
〔H30/02〕GM4.73m,横揺れ周期16秒→横揺れ周期19秒
〔H30/10〕GM1.60m,横揺れ周期18秒→横揺れ周期22秒
〔R02/02〕GM1.20m,横揺れ周期19秒→横揺れ周期23秒
〔R05/07〕GM1.85m,横揺れ周期20秒→横揺れ周期25秒
喫水及びその標示,満載喫水線の種類及びその標示

解答

GMと横揺れ周期(T)との関係式は次式のように表わされる。

A港出港直後のGMとTを,GMA,TA,また,B港入港直前のGMとTを,GMB,TBとすれば次の関係式が成り立つ。

ゆえに,

答:0.96m

〔問題1〕

右図は,遠洋区域を航行区域とする船舶が標示している「満載喫水線を示す線」である。図中の①~③の各記号は,それぞれ何を表すか。【出題:R03/10】

解答

① 熱帯淡水満載喫水線,② 熱帯満載喫水線,③ 夏期満載喫水線

〔問題2〕

右図は,遠洋区域を航行区域とする船舶が標示している「満載喫水線を示す線」である。図中の①~③の各記号は,それぞれ何を表すか。

【出題:H29/02,R02/02,R02/07】

解答

① 夏期淡水満載喫水線,② 熱帯満載喫水線,③ 冬期満載喫水線

〔問題3〕

右図は,遠洋区域を航行区域とする船舶が標示している「満載喫水線を示す線」である。図中の①~③の各記号は,それぞれ何を表すか。

【出題:R05/02,R06/07】

解答

① 夏期淡水満載喫水線,② 熱帯満載喫水線,③冬季北大西洋満載喫水線

〔問題4〕

満載喫水線に関する次の問いに答えよ。
(1) フリーボードマーク(満載喫水線標,乾舷標)とは,どのようなものか。
【出題:H28/02,H28/07,H29/04,H30/10,H31/04,R03/04,R03/07,R04/07,R05/10,R06/04,R07/02】
(2) 遠洋区域を航行区域とする貨物船が標示している満載喫水線の種類と記号とともに4つあげよ。
【出題:H28/02,H29/04,H31/04,R03/07,R05/10,R07/02】
(2類) 遠洋区域を航行区域とする貨物船が標示している満載喫水線を示す線のうち,次の各記号は,それぞれどのような喫水線を表すか。
【出題:H28/07,H30/10,R03/04,R04/07,R06/04】
(ア)TF (イ)WNA (ウ)W (エ)S

解答

(1) フリーボードマークは,貨物の積み過ぎによる事故を防ぐため,船を沈め得る限界(満載喫水線)を表したものである。十分な予備浮力を持って安全に航海できるよう,船体の形状,航海水域や季節等に応じて決められている。

(2) ① TF:熱帯淡水満載喫水線,② F:夏期淡水満載喫水線,③ T:熱帯満載喫水線
④ S:夏期満載喫水線,⑤ W:冬期満載喫水線,⑥ WNA:冬期北大西洋満載喫水線
以上から4つ解答する。

(2類似) (ア)TF:熱帯淡水満載喫水線,(イ)WNA:冬期北大西洋満載喫水線
(ウ)S:夏期満載喫水線,(エ)W:冬期満載喫水線

〔問題5〕

遠洋区域を航行区域とする貨物船の外板に標示されている「甲板線」,「満載喫水線標識」及び「満載喫水線を示す線」の一例を図示せよ。また,図中に夏期乾舷を示せ。
【出題:H28/04,R01/10,R02/10,R05/04,R06/02】

解答

下図のとおり