お兄さんからはぐれてしまったふなのるくんは、とりあえず船がたくさん泊まっている港にきました。
「お兄さんの船は、どれかな~?」
そこへ、ひとりのお姉さんが通りかかりました。
「ねえ、ねえ、お姉さん。」
お姉さんは、周りを見回します。
「ねえ、お姉さんの足元だよ。」
お姉さんがふなのるくんを見つけました。
「あら、小さなコルク人形さん。どうしたの?」
「お兄さんがぼくを落としてどこかへ行っちゃったんだ。」
「まあ、それは大変ね。そうなの、じゃあ早くお兄さんのところへ帰らないとダメね。それで、あなたのお名前は?」
「ぼく、ふなのるくん。船乗りと、こるくでふなのるくん!船乗りのお兄さんの恋人のお姉さんがお兄さんのために作ったお守りなんだ。」
「それで、お兄さんの乗っている船の名前はわかるかな?」
「わかんな~い。」
「それは困ったわね。どんな船だったかわかる?」
「う~ん。あまりお兄さんの部屋から出たことがないのでよくわかんないや。とにかく大きな船だったよ。」
「じゃあ、何か覚えていることある?」
「う~ん。お兄さんは、いつも青っぽい服を着ていたよ。」
「ほかに何か覚えていない?」
「何だか油のにおいが、いつもしていたよ。」
「じゃあ、機関士さんかもね。」
「機関士って、な~に?」
「船にはね、船の運転をする航海士さんと、船を動かすエンジンや船の機械の整備をする機関士さんがいるんだよ。」
「お姉さん詳しいね。」
「そうね(笑)。お姉さんは航海士なの。」
「へ~。お姉さんも船乗りなんだ。」
「そうだ、時間があるから、港の船を一緒に見て回りましょう。何か思い出すかもしれないし。」
「わ~い。ありがとう。お姉さん。」
こうして、ふなのるくんとお姉さんは、港に泊まっている船を見て回ることになりました。