はじめに

以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「運用」の一般運用に関する過去問題です。

※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。

びょう泊

〔問題1〕

びょう泊をする場合,びょう地(びょう地の指定がある場合を除く。)を決めるにあたっては,どのような事項を考慮しなければならないか。5つあげよ。
【出題:H30/10,R01/10,R04/02,R05/07,R06/07】

解答

以下から、5つ解答する。

① いかりかきが良い底質であるか。

② 本船の喫水に対して,干満を考慮した水深が適切であるか。

③ 風浪に対して地形的に適切であるか。

④ 危険物や浅瀬を避けるために十分な水域の広さがあるか。

⑤ 入港しやすく,陸との連絡の便は十分であるか。

⑥ 先にびょう泊中の他船との距離は十分にとれるか。

⑦ 第2,第3の錨地を設定することができるか。

⑧ 漁礁,海底電線などの水中障害物がないこと。

〔問題2〕

びょう地への進入航路を決める場合,次の事項については,どのような航路を計画すればよいか。
(1) びょう地への展望 (2) 変針角度
【出題: R03/7】

〔問題3〕

びょう泊するとき,予定びょう地に正確に投びょうする方法について述べよ。
【出題:H29/04,H31/04,R02/02,R03/07,R05/04】

解答

・びょう地への保針操船がしやすく,正確な位置に投びょうすることができる前進投びょうとする。

・ 事前に予定びょう地への針路・減速地点を決めておく。予定びょう地への針路は船首目標,2物標の見通し線などを利用して決める。また,減速地点や予定びょう地の確認には針路正横の顕著な物標の活用を心がける。

〔問題4〕

投びょうの際,一般に次の(1)及び(2)の処置がとられるが,それぞれの理由を述べよ。
(1) 投びょう前に,いかりをコックビル(つりいかり)の状態にしておく。
(2) 双びょう泊を行う場合,適当な長さに伸出した第1びょう鎖が十分張ってからでないと第2びょうを投下しない。
【出題:H28/04,H29/02,H30/07,R03/04,R05/10】

解答

(1)シャンクがホースパイプに収まった状態から投びょうする場合,ウインドラスのブレーキを緩めても,まれにいかりが落下しないことがある。このため,いかりの荷重をウインドラスのブレーキのみに掛けることにより,ブレーキを緩めるだけで投びょうし易い状態にするためにコックビル(つりいかり)の状態にする。また,コックビルの状態にする過程において,ウインドラス故障の早期発見につながるとともに,投びょう時にいかりが外板に接触して船体を損傷することを防止できる。

(2) 第1びょう鎖が十分張ることでいかりを確実に効かせ,第2びょうを投下するまでの船体の姿勢の保持と惰力の制御ができる。

〔問題5〕

びょう泊中の守びょう法、走びょうに関する次の問いに答えよ。
(1) 走びょうしていることを発見したときには,どのようにしなければならないか。
【出題:R02/04,R03/07】
(1)’ 自船の走びょうに気付いたときには,どのようにしなければならないか。
【出題:H28/07,H30/02,H31/04,R02/10,R03/10,R04/04】
(2) 走びょうするのはどのような原因によるか。4つあげよ。
【出題:H28/07,H30/02,H31/04,R02/10,R03/10,R04/04】
(3) 双びょう泊している場合に,絡みびょう鎖の状態になることをできるだけ避けるためには,どのような措置を講じるとよいか。 【出題:R02/04,R03/07】

解答

(1) ・直ちに船長に報告し,機関を用意すると共に船首部署を発令する。
・単びょう泊中であれば,他げんびょうを投下する。
・ 双びょう泊中であれば,両げんびょう鎖を伸ばす。
・ 機関が使用可能であれば,外力に対抗するように主機を使用する。
・ 必要であれば,揚びょうし,転びょうする。
・ 気象・海象の状況によっては,捨てびょうし出港する。

(2) ① びょう鎖の伸出量が少ないとき。
② 鎖の把駐状態が悪いとき。
③ 風潮流等の外力の影響が予想以上に大きいとき。
④ 海底で絡みびょうになったとき。
⑤ 船体の振れ回り運動が大きくなり,びょう鎖に過大な衝撃力が加わるとき。
⑥ 錨泊地にうねり等の進入があり,びょう泊船に移動モーメントを与えたとき。
⑦ トリムを極度に船尾トリムにしたとき。

以上から4つ選ぶ。

(3) 風潮流の変転するごとにびょう鎖が絡みやすいので,常時振れ回りに注意し舵によって船体の振れを絡まない方向に回すように利用すれば即効果的である。

離着岸操船

〔問題1〕

右図に示す様に,岸壁に横付け係留している総トン数5000トンの固定ピッチプロペラの一軸右回り船A(貨物半載)を離岸出港させる場合の操船法を述べよ。ただし,潮流はないが,風力3の風が図示の矢符の方向に吹いている。また,A船及び岸壁等の長さの割合はほぼ図示のとおりで,港内の水深は操船に支障なく,タグ及びサイドスラスタは使用しない。
(操船の経過概要を示す略図も描くこと。)
【出題:H30/04,R01/07,R03/02,R04/02,R06/10】

解答

① 機関,舵用意,出港S/B,船首右舷にフェンダーを用意する。前部スプリング,ヘッドライン各1本を残し他のラインを取り込む。(ラインを取り込むために時間が掛かる場合は前部スプリングのみを残す。)

② 右舵一杯とし,船首右舷に船体と岸壁との接触防止のため,フェンダーを当てながらラインの弛みを取る。船尾方向から風力3の風を受けているので,時間をおいて船尾が十分に開くのを待つ。(時間的制約がある場合,船尾の風下落ちが十分でない場合は短時間Dead slow aheadを使用する。)

③ 船尾が十分に離れたら,船首部に残した全てのラインを放つ。

④ 舵中央とし,Dead slow asternとする。後進行き脚がつきはじめたら左舵一杯とする。

⑤ 岸壁北端をかわるまで後進し,余裕を持って右回頭できる距離に達したら,舵中央及び主機停止とする。引き続き右舵一杯及びSlow aheadまたはHalf ahead(各船の操縦性能特性に依存する。)とする。(場所等の制約がある場合,右舷びょうを投下して揚びょう回頭を行う方法もある。)

⑥ 港口に向首したら圧流に十分に注意しながら機関及び舵を適宜使用して港口に向かう。

〔問題2〕

総トン数3000トンの固定ピッチプロペラの一軸右回り船甲丸(貨物半載)を右図に示すように,岸壁が岸線から突出してつくるスリップ(岸壁と岸壁の間の水面)内にあるA岸壁に左舷付け係留する場合の,操船上の注意及び操船法について述べよ。
ただし,風力4の北風が吹いており,また,弱い潮流(南流)がある。なお,船の長さ,岸壁間の距離等の割合はほぼ図示のとおりで,甲丸はサイドスラスタを装備しておらず,タグは使用しないものとする。
【出題:H28/04,H30/07,R02/02,R04/07,R05/10,R07/02】

解答

① 着岸操船では,いかりを使用しない場合でも万一の行き脚制御用として,非接岸げんのいかりの投下準備をしておく。外力の影響(風力4の北風,弱い南流)により南側に落とされることを考慮し,着岸岸壁の延長線上を維持しながら,船体の姿勢を保持できる最小の速力でアプローチする。

② 進入速力を落とし過ぎると,船体が大きく風下に落とされるので注意しながら進入する。

③ 甲丸は一軸右回り船であるので,後進をかけるとプロペラ放出流の側圧作用と横圧力の作用で船体を右に回頭させながら左げんの方へ押す力が働く。岸壁Aの陰に入る際,早めに船速を落とし過ぎると船尾部が急に南側に落とされる可能性があるので注意を要する。最終的に岸壁線との最終進入角が15~20°となるように操船する。さらに,船体が停止したときの姿勢は岸壁とほぼ平行で,岸壁と船側とは1/2~1B(B:船幅)程度離した正横位置に静止するのが良い。回頭に対して立て直しが困難であれば,いかりを投下し利用するのも一つの方法である。

〔問題3〕

総トン数3000トンの固定ピッチプロペラの一軸右回り船甲丸(貨物半載)を右図に示す港のA岸壁に右げん横付け係留(点線の位置)する場合の操船法を述べよ。ただし,潮流はないが,風力3の西風が吹いており,港内の状況,船の長さ及び岸壁間の距離等の割合はほぼ図示のとおりで,タグ及びサイドスラスタは使用しない。(操船の経過の概要を略図でも示すこと。)
【出題:H29/04,H30/10,R02/07,R03/07,R04/10,R06/07】

タグの使用

〔問題〕港内でタグを使用して操船する場合,どのような注意が必要か。
【出題:H28/02,H28/10,H30/02,R01/10,R03/02,R05/02】

解答

自船の主機関の使用状況によっては,タグに過度の負荷を与え,タグを危険な状況に陥らすことがある。このため,自船の主機関使用を極力制限し,必要な場合は主機関の使用についてタグに事前連絡をする等の処置が必要である。また,あらかじめ打ち合わせを行い,タグを使用する時期,範囲等を明確にしておくことが重要である。