三級海技士(航海) 運用 筆記試験問題 計算(4)燃料と水の消費による喫水変化
以下は,三級海技士(航海)の筆記試験における,運用に関する過去問題です。
※ 出題は,平成20年7月から平成30年2月定期試験までの問題を調べたものです。「平成/年」を数字で示しております。
問題
甲丸は,海水比重1.025{密度1025kg/cm3}のA港を排水量13000トン,7.00mの等喫水で出港し,海水比重1.020{密度1020kg/cm3}のB港まで,燃料油200トン,清水15トンを消費する予定である。B港入港の予想喫水を求めよ。ただし,TPC(毎cm排水トン数)は20.5トン,MTC(トリムを1㎝変えるのに要するモーメント)は150t-m{1500kN・m}とする。また,浮面心は船体中央で,燃料油及び清水の各タンクの重心は,船体中心からそれぞれ38m前方及び10m後方にあり,これらは変わらないものとする。
注:{ }内の数値は,SI(国際単位系)によるものである。計算はどちらで行ってもよい。【出題:20/10】
同類問題
【出題:23/04】
甲丸,海水比重1.025{密度1025kg/cm3},排水量14000トン,7.50mの等喫水で出港,海水比重1.020{密度1020kg/cm3}のB港,燃料油220トン,清水12トンを消費する予定。TPC:21.0トン,MTC:155t-m{1550kN・m}。燃料油及び清水の各タンクの重心:船体中心から39m前方及び12m後方
【出題:26/04】
甲丸,海水比重1.025{密度1025kg/cm3},排水量12000トン,7.00mの等喫水で出港,海水比重1.021{密度1021kg/cm3}のB港,燃料油210トン,清水10トンを消費する予定。TPC:20.0トン,MTC:150t-m{1500kN・m}。燃料油及び清水の各タンクの重心:船体中心から37m前方及び8m後方
【出題:28/07】
甲丸,海水比重1.025{密度1025kg/cm3},排水量11000トン,7.00mの等喫水で出港,海水比重1.020{密度1020kg/cm3}のB港,燃料油250トン,清水28トンを消費する予定。TPC:19.0トン,MTC:136t-m{1360kN・m}。燃料油及び清水の各タンクの重心:船体中心から36m前方及び14m後方
解答
(1)まずは,現在の海水比重で燃料と水を消費した場合における喫水とトリムの変化量を求めます。
① 燃料と清水の消費からの喫水変化
燃料及び清水の消費量を「w1」及び「w2」とし毎cm排水トン数を「TPC」とすると
② 燃料と清水の消費によるトリム変化量(Δt)
浮面心からの燃料面タンク及び清水タンクの重心までの距離をl1,l2とし,毎cmトリムモーメントをMTCとすると
となる。この時,符号が(+)であるため,船尾トリムが増加する。
③ トリム変化に伴う船首及び船尾喫水の変化量Δdf及びΔdaを求める。
浮面心からの船首及び船尾までの距離をf及びaとし,船の長さをLとすると,
このため,トリム変化に伴い船首喫水は25.7cm減少し,船尾喫水は25.7cm増加する。
(2)海水比重の異なるB港へ移動したために生じる喫水変化量Δd2を求める。
B港における排水量をW,A港の海水比重をρA,B港の海水比重をρBとすると,
よって,比重変化に伴い平均喫水が2.3cm増加する。
(3)B港入港の予想喫水は(ア)(イ)(ウ)(エ)より,
予想船首喫水:df’ =df-Δd1+Δdf+Δd2
=700.0-11.0-25.7+2.3=665.6≒666(cm)
予想船尾喫水:da’=da-Δd1+Δda+Δd2
=700.0-11.0+25.7+2.3=717.0(cm)
答:船首喫水6.66m,船尾喫水7.17m
参考文献
航海技術研究会編:最近3か年シリーズ 三級海技士(航海)800題 平成24年度版,成山堂書店,2012年
航海技術研究会編:最近3か年シリーズ 三級海技士(航海)800題 平成27年度版,成山堂書店,2015年
航海技術研究会編:最近3か年シリーズ 三級海技士(航海)800題 平成30年度版,成山堂書店,2018年