はじめに

以下は,三級海技士(航海)の筆記試験 「運用」の船体構造、整備、復原性及び損傷制御(1)に関する過去問題です。
※ 出題は,平成28年2月から令和7年2月定期試験まで(10年分)の問題を調べたものです。(類)は,類似の問題を示します。解答は一緒です。平成=H,令和=Rに年/月を数字で示しております。

船体の主要な構造部材に関する一般的な知識及び船体の各部分の名称

〔問題1〕

鋼船の船体主要部分に関する次の問いに答えよ。

(1) 平板キール(flat plate keel)は,中心線ガータ及び中心線内底板とどのような形に組まれているか。図示せよ。
【出題:H28/02,H30/04,R01/07,R04/07】
(2) 隔壁甲板(bulkhead deck)とは何か。
【出題:H28/02,H30/04,R01/07,R04/07】
(3) 船尾隔壁(afterpeak bulkhead)の役目を述べよ。
【出題:H28/02,H30/04】
(4) 甲板ビーム(deck beam)とフレームは,何によって結合されているか。
【出題:H28/02,H30/04】
(4)’甲板ビーム(deck beam)端とフレームとを結合している部材の名称を答えよ。
【出題:R01/07,R04/07】

解答

(1)平板キール(図のAとBがある。)


(2) 船首尾隔壁を除いて,その他の水密隔壁が到達する最上層の甲板を言う。(一般には上甲板である。)
(3) 船尾部が破損した場合に浸水を防ぎ,また,船尾管を支える役割をする。(船体横強度にも役立っている。)
(4) 甲板ビームとフレームは,(ビーム)ブラケットで結合されている。

〔問題2〕

図は,鋼船の船首構造を示す略図である。次の問いに答えよ。

(1) 図の①~④の部材の名称をそれぞれ記せ。
(2) 図の③及び④の役目をそれぞれ述べよ。
(3) 船首構造は特に補強され強固な構造になっているが,なぜか。
【出題:H28/07,H29/10,H31/02,R03/02,R04/10,R07/02】

解答

(1)①パンチングストリンガ,②パンチングビーム,③ブレストフック,④ディープフロア

(2)③の役目:両舷のパンチングストリンガを結合し船首材を支え,船首に受ける波の衝撃に耐えるよう船首部を補強している。さらに,衝突による衝撃を船首構造全体に伝えて船首端の受ける損害を少なくするのに役立つ。
④の役目:両舷のフレームを船底部で強固に連結すると共に,船首船底に対する波浪による衝撃(スラミング)に耐える。
(3)船首部は航行中に波の衝撃を受け,また,縦揺れして船底部が水面にたたかれたり,その他衝突による損傷を受けやすいので,特に補強している。

〔問題3〕

鋼船の船首部における次の部材(1)及び(2)の役目をそれぞれ述べよ。
(1) パンチングビーム(panting beam)
(2) ブレストフック(breast hook)
【出題:H29/02,H30/07,R02/02,R02/07,R05/07】

解答

(1)両舷のフレームを連結し,波の衝撃から外板やフレームの凹損を防ぐ。

(2)両舷のパンチングストリンガーを結合し,船首部を補強するとともに船首材を支える。船首の受ける波,衝撃を船首構造全体に伝えて船首端の受ける損害を少なくする。

〔問題4〕

鋼船の船尾櫛造に関する次の問いに答えよ。
(1) 船尾構造は補強され強固な構造になっているが,なぜか。
(2) 船尾部はどのように補強されているか。
(3) 船尾隔壁より後方の船尾倉は.一般にどのように利用されるか。
【出題:R04/04,R06/02】

〔問題5〕

鋼船における次の(1)~(3)の役割をそれぞれ述べよ。
(1) コファダム(cofferdam) 【出題:H29/04,H30/10,R02/04,R04/02】
(2) ビルジウェル(bilge well) 【出題:H29/04,H30/10,R02/04】
(3) 特設フレーム(web frame) 【出題:H30/10,R04/02】
(4) 船尾隔壁(afterpeak bulkhead) 【出題:29/04,R04/02】
(5) マージンプレート(margin plate) 【出題:R02/04】

解答

(1) コファダム:タンカーの貨物油槽の前後や二重底の燃料油,潤滑油及び清水タンク相互の間に設ける空所をいう。壁は油密構造として万一漏洩が生じても油が水に混入し,あるいは隣接区画に流入するのを防いでいる。また,この空所に人が入り,漏洩の有無を検査することができる。

(2) ビルジウェル:貨物倉内のビルジ,機関室,二重底の内底板上面のビルジをポンプで吸入・排除しやすいように溜めるための溝をいう。

(3) 特設フレーム:倉内フレームのみでは強度が不足する箇所(機関室,重量物を積む船倉等)に設けられる大型フレームをいう。船体の横強度を増強するために設けられる。

(4) 船尾隔壁:船尾部が破損した場合に浸水を防ぎ,また,船尾管を支える役割をする。(船体横強度にも役立つ)

〔問題6〕

鋼船の船体構造に関する次の問いに答えよ。

(1) 鋼船の貨物倉内に設置されているピラー(梁柱)について:
(ア)倉内に設置されている目的を述べよ。
(イ)倉内のピラーの数を減らすため,通常はどのような方法がとられているか。
【出題:H28/04,H29/07(類),H30/02,R02/02,R04/02,R06/07】

解答

(1)(ア) ① 上部の荷重を支える。

② 船底部と甲板を結びつけて,船の横の形状を保ち,横強度材として働く。

③ 船体の剛性を増し,振動を防止する。

④ 甲板ビームのスパンを短くして,ビームの深さを減らし,その強さを増すと同時に船倉の有効高さを増す。

(イ)デッキガーダを縦通させてビームを支え,ガーダとピラーを接続する。

〔問題7〕

右図のように,上甲板の舷側線が,船の長さの中央で最も低く,前後部において高くなっている構造を何と言うか。また,その役割を述べよ。

【出題:H28/10,H30/02,R02/07,R03/07,R05/07】

解答

舷弧(sheer)という。

この構造により,予備浮力が確保される。また,甲板上に打ち上がった海水の水はけ(凌波性)を良くする役割がある。

〔問題8〕

下図は,鋼船の区画式二重底構造の断面を示す略図である。下の問いに答えよ。

[問い]
(1) ①~⑥の名称をそれぞれ記せ。
【出題:H30/07,R02/10,R05/02,R06/10】
(2) 二重底内は,どのように利用されるか。2つあげよ。
【出題:H30/07,R02/10,R06/10】
(3) 二重底構造が,特に補強されている箇所又は区画を2つ記せ。
【出題:H30/07,R02/10,R06/10】
(4) 二重底を構成している次の部材の役目を述べよ。
(ア)中心線ガータ(center girder) (イ)縁板(margine plate)
【出題:H30/02(1),R03/04(1),R06/04(1)】

解答

(1) ① 内底板,② 中心線ガーダ,③ ソリッドフロア,④サイドガーダ,⑤マージンプレート(縁板),⑥ビルジキール

(2) 燃料油,潤滑油等の油槽又は清水やバラスト水等の水槽として利用される。

(3) 次のうちから2つ解答する。

① 機関室内,② スラスト軸受の下部,③ ウェブフレーム,ピラーを設ける箇所

④ 重量物を搭載する船倉の下部

(4)(ア)中心線ガーダとは,二重底内中心線を縦通する桁板である。船の中央部では前後左右に連続した開孔しない構造としてフロアを固着し,水密として二重底を前後左右に仕切り縦強度を増強する。また,縦式構造では座屈強度にも有効である。

(イ)外板に接する内底板側部の一条の板で,縦強度及び横強度を増している。また,ビルジは船の横揺れにより船側のビルジウェルに落ちるが,このビルジウェルは内底板の船側部で縁板を傾斜させてビルジ外板との間に形成されるのが一般的である。ただし,縁板を水平にしてその直下にビルジウェルまたはビルジハットを設けてビルジを溜めるようにしているものもある。

〔問題9〕

鋼船の水密隔壁に関する次の問いに答えよ。
(1) 水密隔壁を設けるとどのような利点があるか。2つあげよ。
【出題:H28/04,H29/07,H31/04,R01/10,R03/10,R05/10】
(2) 水密隔壁にはどのような場合に開口が設けられているか。
【出題:H28/04,H29/07,H31/04,R01/10,R03/10,R05/10】
(3) (2)の開口部の水密は,何によって確保されるか。
【出題:H28/04,H29/07,H31/04,R01/10,R03/10,R05/10】

解答

(1) 以下から2つあげる。

① 万一,船底の損傷により船内に浸水を生じても,それを一区画で食い止め浮力を確保できる。
② 船底外板,船側外板及び甲板を結びつけて,船体の横強度材として働く。
③ 火災発生時に,火災をその区画内に限定し他区画への延焼が防止できる。
④ 異なる種類の貨物の積み分けに役立つ。

(2) 水密隔壁には開口を設けないのが原則であるが,隣接区画への交通用として最低限度のものは許される。具体的には機関室後端隔壁から軸路への出入り口,満載喫水線より上の甲板間隔壁に設ける通行口等がある。

(3) 水密隔壁に設けた開口には,水密戸(Watertight door)を取り付け,水密を確保している。