海上衝突予防法 第8条(衝突を避けるための動作)

おはようございます。

本日は、先週に引き続き、海上衝突海上衝突予防法シリーズ第8回目です。

今回は、第8条、「衝突を避けるための動作」です。


(衝突を避けるための動作)

第八条 船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、できる限り、十分に余裕のある時期に、船舶の運用上の適切な慣行に従つてためらわずにその動作をとらなければならない。
2 船舶は、他の船舶との衝突を避けるための針路又は速力の変更を行う場合は、できる限り、その変更を他の船舶が容易に認めることができるように大幅に行わなければならない。
3 船舶は、広い水域において針路の変更を行う場合においては、それにより新たに他の船舶に著しく接近することとならず、かつ、それが適切な時期に大幅に行われる限り、針路のみの変更が他の船舶に著しく接近することを避けるための最も有効な動作となる場合があることを考慮しなければならない。
4 船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、他の船舶との間に安全な距離を保つて通過することができるようにその動作をとらなければならない。この場合において、船舶は、その動作の効果を当該他の船舶が通過して十分に遠ざかるまで慎重に確かめなければならない。
5 船舶は、周囲の状況を判断するため、又は他の船舶との衝突を避けるために必要な場合は、速力を減じ、又は機関の運転を止め、若しくは機関を後進にかけることにより停止しなければならない。


他船との衝突のおそれを生じた場合、衝突を回避するための行動を直ちに行わなければなりません。

第1項 「船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、できる限り、十分に余裕のある時期に、船舶の運用上の適切な慣行に従つてためらわずにその動作をとらなければならない。」

十分に余裕のある時期にというのは、操船上、そして、精神的に追い込まれる前にという意味も含んでおります。

「運用上の適切な慣行」(good seamanship)とは、通常の船員ならば当然のごとく行うであろう適切な措置のことで、経験則に基づく、「このときはこうする」といったものです。とは言うものの、新人船員にとっては、非常に難しいですね。結局、経験を積んで、学んでいくしかないということになるので。そういったことを考慮すると、自分が持っている全ての知識と経験を出し切りなさい、と解釈した方が良いのでしょう。

第2項「船舶は、他の船舶との衝突を避けるための針路又は速力の変更を行う場合は、できる限り、その変更を他の船舶が容易に認めることができるように大幅に行わなければならない。」

例えば、自船が早めに相手船のために避航動作を取ったとしても、相手船が認識していなければ、相手船も同様に避航動作を取るということもあるでしょう。その場合、両者の避航動作が必ずしも衝突を避けるための動作として一致するとは、限りません。街中で、前から来る人を避けるために、右に行ったら、相手もそちらに避けてきて衝突しそうになるのと同様です。

第3項「船舶は、広い水域において針路の変更を行う場合においては、それにより新たに他の船舶に著しく接近することとならず、かつ、それが適切な時期に大幅に行われる限り、針路のみの変更が他の船舶に著しく接近することを避けるための最も有効な動作となる場合があることを考慮しなければならない。」

何だか、よくわからない文章ですね。これは、広い水域で、新たに他の船舶に著しく接近せず、適切な時期に大幅に行う針路変更のみの避航動作は、有効な手段であるが、それ以外の場合は、針路及び速力の両方の動作を行わなければならないことを意味しています。

第4項「船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、他の船舶との間に安全な距離を保つて通過することができるようにその動作をとらなければならない。この場合において、船舶は、その動作の効果を当該他の船舶が通過して十分に遠ざかるまで慎重に確かめなければならない。」

自船が避航船だとして、避航動作を取ったとしても、十分な距離を保って通過できない場合には、相手船(保持船)が不安を感じ、思わぬ避航動作を取る恐れもあります。このため、その時の状況に応じて、他の船舶との間に安全な距離を保って通過できるように避航動作を取らなければなりません。

第5項「船舶は、周囲の状況を判断するため、又は他の船舶との衝突を避けるために必要な場合は、速力を減じ、又は機関の運転を止め、若しくは機関を後進にかけることにより停止しなければならない。」

これは、第3項の補足的な意味合いもあります。一般に避航動作を取る場合、針路変更のみの避航動作になりがちであります。そこで、この5項では、避航動作等を行う場合に、積極的に機関の使用を行うことを規定しております。