2021年7月1日に改正海上交通安全法・港則法が施行されます

2021年7月1日に改正海上交通安全法・港則法が施行されます

明日、2021年7月1日に、走錨事故対策防止を目的とした海上交通安全法及び港則法が改正されます。

新たな制度として湾岸避難制度が導入されます。

以下に概要を示しますので、関係のある方は、よく読んでおいてください。

海上交通安全法等の改正について(走錨事故防止対策関連)

主な改正事項(海上交通安全法及び港則法関連)

① 湾外等の安全な海域への避難、錨泊制限等に係る勧告・命令制度
(海上交通安全法第32条)

② 海上交通センターによる個別船舶に対する情報提供及び危険回避措置の勧告制度
(海上交通安全法第33条・第34条、港則法第43条・第44条)

③ 湾外避難等の円滑な実施のための協議会制度
(海上交通安全法第35条)

④ 湾外避難と港外避難の一体的実施のための海上保安庁長官による港長権限の代行制度(港則法第48条)

湾外避難等の勧告・命令制度(対象となる台風)

  • 異常気象等が激甚化・頻発化する中、近年の走錨による事故の状況等を踏まえ、対象海域への到達時に最大風速40m/s以上の暴風域を伴う台風を対象とする。
  • 気象庁が発表する台風の5日間予報(位置、進路、速力、最大(瞬間)風速、暴風域の範囲等)に基づき、勧告を発出する必要性、時期等について的確に判断する。

湾外避難等の勧告・命令制度(対象となる海域)

  • 勧告の対象となる海域は、地理的な一体性のほか、異常気象等による航行環境等への影響やそれに応じた避難行動の共通性を踏まえ、設定。
  • 具体的には、東京湾及び伊勢湾は各湾を単位として、瀬戸内海は3つの海域に区分して設定し、それぞれで運用基準(※)を策定。(※避難行動の内容、対象船舶、勧告発出時期等)
  • なお、協議会(後述)も勧告の対象となる海域毎に設置。
  • 勧告の対象海域と協議会

【参考】避難船舶への航行支援情報の提供

  • 湾外避難等を安全に実施するためには、気象庁から提供される台風に関する各種情報の入手に加え、船長等を含む船舶運航者が、避難予定先の海域における錨泊船による混雑状況や、経路上の風向・風速等を適切に把握し、避難場所、避難時期、避難方法等について適切に判断する必要。
  • 海上保安庁においては、各種情報をホームページで提供。

勧告の対象海域の名称 勧告発出権者 法定協議会の名称(仮称) 主催者
東京湾 第三管区本部長 東京湾台風等対策協議会 第三管区本部長
伊勢湾 第四管区本部長 伊勢湾・三河湾台風等対策協議会 第四管区本部長
大阪湾 第五管区本部長 大阪湾・紀伊水道台風等対策協議会 第五管区本部長
瀬戸内海中部 第六管区・第五管区本部長(共同) 瀬戸内海中部台風等対策協議会 第六管区本部長
瀬戸内海西部 第六管区・第七管区本部長(共同) 瀬戸内海西部台風等対策協議会 第六管区本部長

湾外避難等の勧告・命令制度(海域別の対象となる船舶等の内容)

① 東京湾

  • 風の影響を受けやすいコンテナ船、自動車運搬船等(高乾舷船)及び事故発生時に船舶交通に重大な危険を及ぼす危険物船のうち、一定の大型船を対象とし、湾外への避難及び入湾の回避を促す(※例外:定期旅客船等の定期航路を運航する内航船舶、「平水」、「沿海」又は、「限定沿海」以下を航行区域とする内航船舶)。※いわゆる「湾外避難」と「入湾回避」
  • 特に錨泊船による混雑が著しいと予想される海域であることから、上記に加え、台風による影響がある一定期間(強風域が到達する12時間前から暴風域が通過するまでの間)、全ての船舶を対象とし、入湾の回避を促す。

② 伊勢湾、瀬戸内海(大阪湾を含む)

  • 風の影響を受けやすいコンテナ船、自動車運搬船等(高乾舷船)及び事故発生時に船舶交通に重大な危険を及ぼす危険物船のうち、一定の大型船を対象とし、湾外への避難及び入湾の回避を促す。※いわゆる「湾外避難」と「入湾回避」
  • ただし、強風を遮る島影等が多数ある等の海域もあることから、上記の船舶であっても、台風の影響の少ない海域内で安全に避泊・避難できる場合は、この限りでない。

湾外避難等の勧告・命令制度(協議会開催~勧告発出~勧告解除)

  • 湾外避難等の勧告に係る一連の流れとしては、勧告発出に当たっての協議会の開催(強風域到達の3日程度前)、勧告の発出(強風域到達の2日程度前)、勧告の解除(強風域通過後等)を想定。
  • また、港則法の特定港等における任意の協議会と緊密に連携するほか、港内にある湾外避難等の対象船舶については管区本部長(海上保安庁長官から委任)が必要な港長(海上保安部署長)の権限を代行。

協議会制度

  • 協議会は、勧告対象となる海域毎に、各管区本部長が主催し、船舶運航関係者、関係行政機関等の広範・多様な関係者により構成。
  • 協議会において、勧告の運用ルールについてあらかじめ協議・合意(構成員には協議結果の尊重義務)。その上で、実際に台風が予想される場合、協議会を通じて勧告内容の円滑な実施のための連絡調整等を図る。
  • なお、港則法の適用港に設置される協議会(法定外)とも緊密に連絡調整を図る。
  • 協議会の運営に当たり、会則の整備のほか、オンライン参加、最寄りの港長等への協議の一任、書面による意見提出等の参加しやすい環境の整備に努める。
  • 勧告の対象海域と協議会【再掲】
勧告の対象海域の名称 勧告発出権者 法定協議会の名称(仮称) 主催者
東京湾 第三管区本部長 東京湾台風等対策協議会 第三管区本部長
伊勢湾 第四管区本部長 伊勢湾・三河湾台風等対策協議会 第四管区本部長
大阪湾 第五管区本部長 大阪湾・紀伊水道台風等対策協議会 第五管区本部長
瀬戸内海中部 第六管区・第五管区本部長(共同) 瀬戸内海中部台風等対策協議会 第六管区本部長
瀬戸内海西部 第六管区・第七管区本部長(共同) 瀬戸内海西部台風等対策協議会 第六管区本部長

※瀬戸内海中部・西部協議会は、六本部長が合同開催。
※隣接する協議会では特に緊密な連絡調整等を図る。

  • 構成員
    • 船舶運航関係者:船主協会、内航総連、旅客船協会、外国船舶協会、水先人会、船長協会、海員組合等
    • 関係地方行政機関:地方運輸局、地方整備局、地方気象台等
    • その他:港湾管理者、学識経験者、係留施設管理者、船舶代理店業協会、港湾荷役・運送事業団体、海難防止協会

海上交通センターによる情報提供、危険回避勧告

  • 海上交通センターは、湾内で錨泊・航行する船舶に対し、船舶の走錨のおそれなど事故防止に資する情報を提供することとし、一定の海域において当該情報の聴取を義務化。
  • また、海上交通センターにおいて、船舶同士の異常な接近や、船舶の臨海部に立地する施設等への接近等を認めた場合、当該船舶に対し、接近を回避する等の危険回避措置を勧告。当該勧告を受けた船舶に対し、講じた措置の報告を要請。
  • 情報聴取義務海域については、法施行に合わせ、東京湾のアクアライン周辺海域及び京浜港の横浜・川崎沖を設定。なお、関西国際空港周辺海域については、所要の体制整備を踏まえ設定する予定(令和4年度中)。

参考資料

頻発・激甚化する自然災害等新たな交通環境に対応した海上交通安全基盤の拡充・強化について 答申(2021年1月28日)

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