衝突のおそれ

さて、本日の記事は、「衝突のおそれの判断」についてです。

衝突のおそれの判断(海上衝突予防法 第七条)は、航海当直における基本中の基本ですね。

海技試験では、必ず押さえておかなければなりません。

まず、第1項には、「船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断するため、その時の状況に適したすべての手段を用いなければならない。」とあります。

すべての手段とは、何でしょう?

最初に思い浮かぶのがコンパス方位の変化(目視による判断)ですね。もちろん、レーダーも。AISが装備してある船であればAIS。VHFを使用するのもありです。その他、考えられるものを出来るだけ答えるようにしてください。

次に、第2項には、「レーダーを使用している船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあることを早期に知るための長距離レーダーレンジによる走査、探知した物件のレーダープロッティングその他の系統的な観察等を行うことにより、当該レーダーを適切に用いなければならない。」とあります。

適切に用いるとは?

書いてある通りですが、「早期に知るための長距離レーダーレンジによる走査」と「レーダープロッティングその他の系統的な観察等」です。近距離のレンジだけでなく、時々、遠距離のレンジを使用して早めに発見することと、発見した物標を一定時間ごとに観察することによって、どのような方向に動いていて本船とどのような見合い関係にあるのかを観察しなさいということですね。

3つ目の注意点としては、第4項の前半部分「船舶は、接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められない場合は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならず」と、後半部分の「接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められる場合においても、大型船舶若しくはえい航作業に従事している船舶に接近し、又は近距離で他の船舶に接近するときは、これと衝突するおそれがあり得ることを考慮しなければならない」の違いを、十分理解しておく必要があります。

どっちにしろ、衝突のおそれがあるという話なんですけど、前半部分が「衝突するおそれがあるものと判断しなければならない場合」について規定されており、後半部分が「衝突するおそれがあり得ることを考慮しなければならない場合」について規定されています。

『衝突するおそれがあるものと判断しなければならない場合』

上記については、他船とのコンパス方位に全く変化が認められない、又は、小さな変化が認められる場合であります。

『衝突するおそれがあり得ることを考慮しなければならない場合』

上記については、接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められた場合においても、次に掲げる場合は、衝突するおそれがあり得ることを考慮しなければならないと規定されています。

  1. 大型船に接近する場合
  2. 曳船作業に従事している船舶に接近する場合
  3. 近距離で他の船舶に接近する場合

以下に、法律の原文を示しますので、よく読んで理解してください。

ちなみに、私は、二級の口述試験の時に、この条文について聞かれました。

海上衝突予防法 第七条(衝突のおそれ)

第七条  船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断するため、その時の状況に適したすべての手段を用いなければならない。

2  レーダーを使用している船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあることを早期に知るための長距離レーダーレンジによる走査、探知した物件のレーダープロッティングその他の系統的な観察等を行うことにより、当該レーダーを適切に用いなければならない。

3  船舶は、不十分なレーダー情報その他の不十分な情報に基づいて他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断してはならない。

4  船舶は、接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められない場合は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならず、また、接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められる場合においても、大型船舶若しくはえい航作業に従事している船舶に接近し、又は近距離で他の船舶に接近するときは、これと衝突するおそれがあり得ることを考慮しなければならない。

5  船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを確かめることができない場合は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならない。

参考文献

青柳紀博:『航海科 四級・五級 法規 合格テキスト』,海文堂,2008.1

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