三級海技士(機関)機関一 筆記問題 ディーゼル機関(26)

三級海技士(機関)機関一 筆記問題 ディーゼル機関(26)

以下は,三級海技士(機関)筆記試験,機関一に関する過去問題です。

※ 出題時期は,平成22年7月から平成29年4月定期試験までの問題を調べたものです。

問題

ディーゼル機関の自動弁式燃料噴射弁に関する次の問いに答えよ。

(1) 開弁圧(噴射開始圧)を低くした弁を取り付けた場合,そのシリンダの燃焼は,どのように変わるか。 【出題:25/10】

(類) 開弁圧(噴射開始圧)を高くした弁を取り付けた場合,そのシリンダの燃焼は,どのように変わるか。 【出題:24/02,28/02】

(2) 開弁圧と閉弁圧は,どちらが高いか。また,その理由は,何か。 【出題:24/02,25/10,28/02,29/07】

(3) ノズルを冷却すると,どのような害を防止できるか。 【出題:24/02,28/02】

(4) ノズル先端にカーボンが付着するのは,どのような場合か。 【出題:29/07】

(5) ノズルを燃料噴射弁本体に取り付ける場合,どのような注意が必要か。 【出題:29/07】

解答

(1) ① 噴射圧が低いため燃料油の霧化は悪く,油粒が大きくなり点火は遅れる。
② 燃料油の噴射始めは早くなるため噴射量も多くなり,一時に点火して最高圧が高くなる。
③ 噴射終わりの切れが悪くなり,あと燃えを起こす。
④ 燃焼が不良となり,噴射量の割合には出力が減少する。

(類)燃料油の噴射時期は遅れるものの,噴射圧が高いため燃料油の霧化はよくなり燃焼が良好となる。噴射量は減少するので,出力は他のシリンダに比べて小さくなる。

(2) 開弁圧が高い。

開弁圧をPo,閉弁圧をPc,燃料噴射弁ニードルの燃料油の圧力がかかる部分の断面積をA1,弁が閉じているとき燃料油の圧力がかからない弁座の内側の断面積をA2とすると,弁が開く瞬間及び閉じる瞬間に作用する力Fo,Fcは,

Fo=Po×(A1-A2)

Fc=Pc×A1

となる。弁のリフトによって弁ばねのばね常数が変化しないとすると

Fo=Fc

となり,A1>A1-A2であるから

Po>Pc

となる。

(3) ノズルの過熱による,ノズル先端へのカーボンの付着,針弁の焼付き,ノズルの焼損を防止できる。カーボンが付着するとカーボンフラワーが形成されて燃料噴霧が妨げられ燃焼不良を起こす。

(4) ① 運転負荷が増すにつれ,燃料噴射弁の冷却が悪く,過熱されて針弁が焼付気味で燃料の噴射が悪くなったとき。同様に冷却水の温度が高過ぎるとき。

② 燃料弁の摺合せ不良による漏洩,又はチップのつまりがあるとき。

③ 燃料ポンプの作動不良又は油密不良により,噴射圧力が低下したとき。

④ シリンダの圧縮圧力不足で,燃焼室の温度が十分に上昇しないとき。

⑤ 低質油の使用による,高粘度,不純物の過多により,油のたれが増したとき。

(5) ① 各部良く摺合せの行われたものを軽油,良質A重油等で十分に洗浄する。

② ディスタンスピース(中間板)や,ノックピンを正確に取り付ける。

③ ノズル締付のキャップナットは片締めにならないように注意する。また,締め過ぎると前述のノックピンが折損する場合があるので注意する。

参考文献

機関科口述試験研究会編:機関科三級 口述標準テスト,海文堂,1999年

東京海洋大学海技試験研究会編:海技士3E 徹底攻略問題集,海文堂,2011年

機関技術研究会編:最近3か年シリーズ 三級海技士(機関)800題 平成28年度版,成山堂書店,2016年

機関技術研究会編:最近3か年シリーズ 三級海技士(機関)800題 平成30年度版,成山堂書店,2018年

三級海技士(機関)筆記試験問題
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