コンテナ船とイージス艦の衝突事故に関連して その2

おはようございます。

水曜日に引き続き、「コンテナ船とイージス艦の衝突事故に関連して」ということで、ツイッター上で気になった関連するワードについて、少しお話しします。

本日は、自動操舵装置(オートパイロット)。

なんだか、今回の報道等を見ておりますと、自動操舵装置が出発地から目的地まで勝手に舵を操作してくれる装置だと勘違いしている方が多いように思われます(だいたい衝突海難の話になるとこの話が出てくる)。

その原因としては、飛行機のオートパイロットが、地図上の指定したポイントを通過するように制御してくれるため、このイメージが強いのではないかと考えられます。

それと、大きな勘違いは、自動操舵装置と自動操船との混同。これは、論外なのですが・・・。とりあえず、完全自立型の自動操船については、実用化に向けて研究が行われているものの、実用化には至っていません(研究成果としては、徐々に出てきている)とだけ申しておきましょう。

さて、確かに、船のオートパイロットにも、飛行機と同様に、船の航路を制御するもの(TCS:トラックコントロールシステム)があります。

それも、かなり昔から。それこそ、私が全長約250mのコンテナ船の当直航海士をしていた1990年代前半に、既に存在し、私も装備されている船に乗船していました。

私が乗船した船の装置は、GPSがまだ普及していなかったことから、その前身であるNNSS(Navy Navigation Satellite System)によって、自船の船位を確認し、それに基づき、予め設定した位置で変針(針路変更)するというものでした。

地域によっては、30分~1時間に1度、位置(誤差は存在する)が求められ、その間は、船の速力や進路で推測するという方法で、位置を求めておりました。このため、TCSは、大きく位置がずれる恐れもあり、使用しておりませんでした。

現在は、GPSの側によるTCSが存在しますが、大洋航海中ならともかく、沿岸航行中でTCSを使用することは、安全の面から考えて行う人はいないと思います。そうそう、他船を避けてくれるわけではありませんしね。

さて、一般の方の自動操舵装置の認識は、上記のTCSだと思いますが、一般の民間商船の船員からすれば、船の船首方位だけを制御するHCS(ヘディングコントロールシステム)の方が一般的です。

通常、一般商船の世界で、自動操舵装置、オートパイロットと言えば、HCSのことを示します。たぶん、それしか見たことのない人が多いのではないかと思います。

このHCSタイプのオートパイロットは、操船者が定めた船首方位を維持するように自動で舵を操作してくれる装置で、例えば、潮流や風等の影響を受けて流されたとしても、船首方位を保持するだけで、想定していた航路に戻してくれません。

ということで、常に舵を握っていなければならないという作業からは、解放されますが、ほっといて目的地まで自動で舵を取ってくれるわけではありません。

ですので、当直航海士は、適宜、船位を確認し、予定していた航路からのずれを確認し、オートパイロットの設定針路を変更しなければなりません。

なんとなく、分かって頂けたでしょうか。

ということで、本日は、自動操舵装置(オートパイロット)について、説明しました。

船乗りを目指す方は、これに関連して自動操舵装置の調整機能3種類について、勉強をしておきましょう。

一般の方は、船と飛行機で一般的なオートパイロットが異なる、自動操舵装置自動操縦違うということだけ、認識頂ければ幸いです。

参考文献

自動操舵装置等の適正使用へ向けた実務検討会:『内航船における自動操舵装置の適正使用の促進へ向けたガイドライン』,2009.7.