できるだけ多くの海事人材を世に送り出す(その11)

おはようございます。

お陰様をもちまして,海技塾も2周年を迎えることが出来ました。

これも,皆様がアクセスして頂けるお陰です。

なかなか,皆様の望む記事ではないかも知れませんが,私なりに思う海技試験に関する有益な情報を提供してきたいと思います。

さて,2周年ということで,久々に「できるだけ多くの海事人材を世に送り出す」シリーズで塾長の独り言を。

あなたにはまだ早い

以前,私が,一級海技士(機関)筆記試験を3度目にようやく合格したという話をしました(記事はこちら「その4」「その5」)。

外航の船会社で乗船履歴(当時は3年)が付いた私は,30歳前にして一級海技士(機関)口述試験を受験しました。

無謀にも同じ時期に一級ボイラー技師,海事代理士の試験を受験てでの挑戦でした。

先に終わった一級ボイラー技士も海事代理士の試験も勉強不足で全く手ごたえなし,更に一級海技士(機関)の口述試験も十分に勉強が出来ていない状態で挑みました。

二級海技士(機関)口述試験が,そんなに難しくなかったので,どこかに甘い考えがあったのだと思います。

まず,試験会場に入って,氏名・生年月日等を述べた後,試験官に言われたのは,「君は,まだ若いけど一級が必要なのかね?まだ,必要ないでしょう?」(一部意訳)

そして,「まだ,セコンドしかしていないの?」

もう,最初からハードルが上がっていました。

更に,私の勉強不足・経験不足もあり,ほとんど答えることが出来ませんでした。

もちろん結果は,不合格。

気を取り直して,すぐに次の定期試験を受験しました。

しかし,また同じ試験官。

前回よりは,答えられているものの,突っ込まれたら答えられない。

どう考えても不合格だな~と思いました。

試験が終わり,もう駄目だと確信した私は,試験官に質問しました。

「私は,もう船を辞めてしまったので,船で経験を積むことが出来ません。しかし,海事補佐人をするためにどうしても一級が必要なんです。試験に受かるには,どういった勉強をすれば良いとますか?」

すると,試験官は,一言「三級の基礎から勉強しなおしなさい」

そもそも基礎が出来ていない!!とのこと。だから深く掘り下げると答えれない。

正直,もう受かる気がしませんでした。

その後,大学の編入を控えていたので,一旦,海技試験を保留にし,大学卒業後に改めて受験することにしました。

そして,大学を卒業。

もう船会社を辞めてしまって,新しい乗船履歴を付けられない(受験には5年以内の乗船履歴が必要)私は,大学を卒業してから1年かけて三級海技士から勉強しなおしました。
乗船履歴の有効期限が切れる1年以内のレンジに入り,三度目の口述試験にチャレンジしました。

試験会場に入り,試験官を見たところ,前回・前々回の試験官とは,異なり,何だか雰囲気が優しそうな感じの試験官でした。

今回は,順調とまでは行きませんでしたが,何とかヒントを出してもらいながら,そこそこ答えられました。

そして,試験が終わり,試験官が「これで試験を終了します。では,これから頑張ってください。」

受かった!!!と私は,思いました。

もちろん,結果は,合格。

乗船履歴が付いて,4年半での合格となりました。

今,考えると,二級と一級の差は,学力の差ではなく,機関の場合だと「この人が機関長をやって良いのか?」という判断基準が試験官にはあるのだと,私は思います。

その部署の最高責任者として,必要な知識と経験を持ち,あらゆるトラブルに対応できるかを口述試験によって判断してしているのではないかと。

もちろん,これは,個人的な感想です。

最初の受験の時は,勉強不足の20代。

最後の受験の時は,大学で工学を再勉強し,三級海技士から再勉強した30代。

たった3年ほどではありましたが,大きく成長できたことにより,試験官の判断基準の合格最低ラインに達したのだと思います。

それと同時に,再度勉強を行えば,行うほど,現場で学ぶべきことが沢山あったことを痛感することとなりました。

なかなか,学生から社会人(船乗り)になって,日々の作業やトラブルに追われ,十分に勉強が出来ていなかったことを悔やみました。

しかし,これは,船を降りて大学に行ったからこそ,口述試験で2度も落ちたからこそ気付くことが出来たのであって,普通にそのまま船乗りを続けていたり,そのまま陸上に転職していたら気づきようの無かったことだと思います。

そう思えるのも,歳を重ねてきたせいですかね~。

今の自分なら,私を口述試験で不合格にした試験官の気持ちが分かるような気がします。

若い船乗りの皆さん,私もそうであったように,「あなたにはまだ早い!!」と20代で言われたら単に反抗したくなりますが,ただ単に反発するのではなく,自分に何が足りていないのか少し考えてみては如何でしょうか。年齢ではない何かを見つけたとき,一つ成長できるチャンスかも知れませんよ。