新人マリンエンジニアの皆さんへ

おはようございます。
本日は、4月1日ということで、新しくマリンエンジニア(船舶機関士)として就職された方に、四半世紀以上前に就職し、少しだけマリンエンジニアとして経験のあるおじさんから少しだけお話を。

これから船に乗って良き先輩に出会えたら、あなたは、こう思うでしょう。「なんて出来る人なんだ!」
しかし、1年後、ある人は思うでしょう。「自分は、仕事ができる!!」と。
実務を行う上で、学生時代の1年間と、船員としての1年は比べ物にならないものです。
実務を始めると、最初に重視されがちなのが、スタンバイ作業や、日々の整備作業ではないかと思います。
先輩や上司も、その習得が早いほど、「あいつは出来るやつだ!」と評価してくれるでしょう。
そして、いつの間にか勘違い新人エンジニアが生まれるのです(と私は思います)。

私は、マリンエンジニアの本質は、どのようにトラブルを解決するか?
そして、どのようにしてトラブルの発生を防ぐか、であると考えます。
そのためには、まず、視覚情報だけにとらわれないことです。
その理由は、機関室で起こるほとんどの現象は、人が直接見ることの出来ないところで起こっているからです。
ある意味、人が直接見ることの出来るトラブルは、かなり症状の進んだものと言えます。

実は、不具合を発見する上で、視覚情報より役立つのが嗅覚だったりします。
例えば、蒸気漏れの初期段階は、断熱材が湿る程度でなかなか視覚的に気付きにくかったりします。しかし、断熱材が湿ると、独特の臭いがします。
また、異音に気づくことは、エンジニアにとって重要なことです。そのためには、日頃から各機器の音を覚えおく必要があります。残念ながら、私の場合、高音域が聞き取れなくなってきましたが(笑)。

改めて言うまでもなく、触覚も重要な情報です。音では分からなかった機器の振動や温度、表面の状態などを知ることが出来ます。
もう一つは、味覚というのもありますが、他の感覚と比較して、活躍する部分が少ないように思われます。
そして、最も重要な情報は、間接的視覚情報(このような単語はないと思いますが)です。例えば、温度計,圧力計,流量計,フロートスイッチなどは、直接は見ることが出来ないものを数値化又はON・OFF情報で示してくれます。

しかし、これらの情報を多く得られたとしても、情報から機器の状態を正確に判断するには、過去のデータと流体力学,熱力学,伝熱学といった判断を行うための知識が必要になります。
更に言えば、不具合などの原因究明には、機器の状態(三次元)だけではなく、不具合がどのように進行したか、四次元(時間軸を含む)で考える必要があります。
このようなことが日頃から出来る(身に付く)ようになって、初めて一人前のエンジニアと言えるのではないかと私は思います。

ただ単に、日頃の業務・作業をこなすのであれば、商船教育など必要ありません。
とは言うものの、私は、学校で学んだことを全て理解し、覚えているわけでもなく、決して優秀なエンジニアではありませんが・・・。
ただ私は、外航で数年間エンジニアを経験した後、工学系の大学に行って「この定理は、こういうことだったのか!」と思う場面がいくつかありました。
そして、数年前、船の現場に帰ってきて、機器を毎日観察していると、パイプライン,ポンプやタンク中の状態が、なんとなく理解できるようになり、不具合が生じた場合にも的確な原因究明が出来るようになりました(過去の私と比較して)。
話が長くなりましたが、これらを踏まえて新人エンジニアに贈る言葉は、
「常にギモンを持ち、他人より多くナゼを繰り返す」
これを心掛けて仕事を行うようにしてほしいと思います。
では、新しいスタート、悩みは吐き出して疑問を抱え、謎解きを楽しみましょう!
なお、本日は、4月1日ということで、上記の内容を信頼するか聞き流すか、あなた次第ですよ(笑)。

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